第2話 異常な午後

美咲め...本当に油断ならん奴だ......


今日はやけに学校いる間、奴に絡まられて大変であった。



昼食時には、


油断していたらアイツに俺の好物を取られていた。



席が廊下に近いこともあって、


クラスが違くともちょっかいを出されやすいのだ。



いつ今日何か美咲を挑発するようなことを言ったかを思い返す。


でも全くそういった発言は思い当たらない。



何が気に入らなかったというのか......



そうして自転車を漕いでいる内に、そうら見えて来た



やたらデカい大迷惑なお隣さんのお家の一角が見えて来た。


高い塀から色んな背の高い植物まで見える。



中は植物園にでもなっているというのか。



家の前に着くと自転車を道のわきっちょにとりあえず停めて、


いつもの位置の高くて背伸びをしなければならないようなポストに


プリントをまた今日も入れた。



これが毎日。



伸び盛りのこの時期にこれをしているというのに

伸びない背には不安しかない。


それもこの大金持ちのせいだと小声で悪態をつこうとした、



その時だった。




「おい、そこの者」


「こいつらのせ...ん?」



何か生意気そうな女の声が聞こえてきたような気がしたが......



まあ、俺の完璧な嫌味ったらしい上流階級親子の脳内再生であろう



「おい!!そこのお前!」



今度こそ更に生意気な大声がハッキリと聞こえた。



「ああん!?」


振り返るとそこには防犯カメラがある、音声機能までついているのか?



「おほん、...ええお前が、毎日うちに連絡物を届けてくれている者か?」



なんだこいつは?声からしてやはり本人か?



「...ああ、そうだよ!毎日届けさせられてる、山崎 治雄だ!!」




それに驚いたかのようにカメラのレンズが大きくなったり小さくなったり、


かと思えばゆっくり足元から頭の先まで見られた様に

カメラが機械音を出しながら


縦に動いた。



「ほう...良かろう!今、扉を開けてやる!入って参れ!!」


「いや、いいよ」




そう帰ろうとした時、

ずっと閉まっていることしか無かった門が重々しく開き始めた。



「おおっ...」



さすがに分厚い扉が開く様は中から

何かが出てくる映画の一幕を連想させられて


目が離せなかった。



そして見えた中は、真っ直ぐと豪邸に延びる道と両サイドのジャングルだ。



「とんでもねえなあ...」



そう言いつつも興味に負けた俺は吸い寄せられるように、

中へと入っていった。



奥へと歩いていくと本当にテーマパークの演出セットのように右も左も


木々が生い茂っている。



これの管理に手間も掛かるだろうに......


金持ちのすることは分からん。




周りに熱中していると後ろの扉がしまった音がして振り返った。


確かにいつも通りに閉まっている、


問題は今回は中側にいることだ。



「まるで誘拐だな...」



自分から入っていったので文句も言えないが......



歩いていくと西洋風の見ていて楽しげな噴水もあれば、


庭は迷路でもあるかのようにカットされた観葉植物が敷き詰められている。



開けられた車庫から見える並んでいる車も車種は詳しくないが、

どれも有名で親父が冗談で



「稼ぐようになったらあれ買ってくれよ~」



というようなものから力強い馬力を誇りそうなものまで様々だ。



そして豪邸はミニチュアの城のようだ。



赤い絨毯の敷かれた階段を芸能人の気分で上がっていくと


またドアが見えた。



これを開けた先に奴がいるのか



そう近づいていこうと瞬間、



「よく来たなぁ!」




屋上テラスにアイツはいた。

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