麗しき男装令嬢の幸福の作り方 A to Z
柊月
prologue
男装令嬢の恋物語です。
序盤暗めで、恋愛色が出てくるのは少し後になるかな、と思いますが、お付き合いいただければ幸いです!
柊月
*****
「お前は今日からリリアンヌとして暫く生活しろ」
現ヴァルトリア侯爵――私の父から言われた言葉に唖然とした。それと同時に父から言われた嘗ての台詞がフラッシュバックする。
『お前は今日からフィロナンテだ』
**
私はヴァルトリア侯爵家に生を授かった。当時、私達が生まれた時は家の者達全員が泣いて喜んだという。それもそうだ。病弱で体の弱かった母。そんな母が大きな負荷がかかり、命の危険を伴う出産を無事終えて、しかも生まれてきたのは三つ子だったのだから。
しかし、私は父を父だと思った事はない。
――――私はヴァルトリア侯爵家からいないものとされている。
いや、いた、というのが正しいのかもしれない。今はちゃんとこの家に、父に、必要とされている。
**
私はツェルシー=ヴァルトリアという名前を付けて貰った。昔は父に溺愛されていたらしい。今絶対零度のゴミを見るような視線を私に向けている父とは真逆であると、よく思ったものだ。
私の扱いが邪険にされ始めたのは母が亡くなってからだ。
私達が生まれてから暫くは、母の体調も悪くはなかった。が、自分で出来る限り育てたいと言った母は、三つ子の世話に奮闘するがあまり無理をして倒れてしまったのだ。そこから母はベッドから動けない生活となった。
私が「いらない」とされる理由と母の死亡が何故繋がるのかは、私の目の色にある。
私は世にも珍しい、オッドアイだったのだ。
この国では私のようなオッドアイの人間は「呪われ子」――災いをもたらす子――として世の中の嫌われ対象なのである。
私がオッドアイと分かった時は、まだ父は私を父の娘であると思っていてくれたようだった。そんな「呪われ子」の言い伝えは所詮言い伝えなのだから信用ならん、私の娘であることには変わらないと。
しかし―――私はあの時をはっきりと覚えている。
母に最後にあった時に言われた言葉も、母の涙も、母が亡くなった後の父の罵倒の言葉も一語一句全て。
私は―――言い伝えが本当で、本物の「呪われ子」だと、知っている。
母を、殺したのは、私、であると、誰もが、知っている。
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