雅やかな世界。百合の香りの漂う幻想。

いっときの美しくも儚い夢を見ていたかのような読後感です。
百合の花を体に宿らせた若き姫君の生の歩みが、やわらかで雅やかな文体でつづられており、独特の平安幻想を作り上げている物語です。
切なく麗しい独自の世界があるだけでなく、短編としての完成度も高いため、一気に引き込まれて読み終えました。
平安時代や、女性同士の交流のお話が好きな方はもちろん、もっと広く様々な方におすすめしたくなるような、胸に静かにしみる素敵な作品です。