ストロナペスへの断罪

作者 星崎ゆうき

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★★★ Excellent!!!

 近未来、先進国の都合により、内戦に巻き込まれたアザニアという国の復興と再開発による、またもや先進国の都合による格差を前提とした社会。

 そのなかで、人が生きるうえでの立場のちがいが、そのまま行き過ぎた資本主義の犠牲となるものを踏みつけ続けている。

 これは現代社会の、生きることが保障された、つまり国家、社会として恵まれた我々をふくめた人びとの一分、一秒が、その間、物理的にも精神的にも死に絶えていく人びとたちが生産されつづけることによって成り立っている、風刺の物語です。

 より良い社会を構成する人びとが持ち合わせるべき倫理は、消費を促すための競争、その社会的ゲームを本質としたこの世界というシステムの前では、あまりにも脆弱で、けれど、それでも、犠牲となる側の願いから出た狂気に、主人公のコウタは対面せざるを得なくなります。

 その瞬間、湧きあがる人間的な感情は、人間的だとして、「善し」として、おさめてしまってよいものなのか。

 この物語のなかで、生まれてきてしまった世界によって犠牲を強いる立場とされた人びとへ向けられる狂気を見つめてみてください。

★★★ Excellent!!!

魅力的な人物と作り上げられた世界、そこでの謎を追う物語。
短編にしておくにはもったいない題材で、もっと長いものにしていただいて、じっくりと味わいたい、そういう作品である。

特に近未来(?)の架空の国に関する出来事や、政治、また宗教といった話題についてはしっかりした設定があることが伺え、それらについてもっと知りたいと思えてくる。

また政治的意思決定支援システム『ミソラ』等が登場することから、作者の他の物語と共通の世界観による作品だと思われるが、それならば尚更、彼らにもっと活躍する紙面を割いてあげてもらいたいと思ってしまう。

ちなみに某映画を少し思わせる作りは意識されたのでしょうか?

★★★ Excellent!!!

内戦の爪跡が深く残るアザニアに立つ、ストロナペスと呼ばれる超高層ビル。
その姿は美しい天空城でもあり格差社会の象徴でもあった――。

消滅した国の復興に交錯する思惑たち。
それを本当に望んでいるのは誰なのか。

自身が立つ国をより良くしたいと願う気持ちは誰にでもあるだろう。
ただそうすることはそう願うことは本当に正しいことなのだろうか。

祈り。
祈りとは。
その祈りがいつかあるべき場所へ届きますように。

★★★ Excellent!!!

 ――本、落としましたよ。
 電車内で、不思議な文字の本を拾った主人公は、女性に声をかけた。
 ――ありがとう。大事な本だったから。
 二人はこのことをきっかけに、親密な仲になる。
 そこはストロナペスという貧富の格差が建つ国だった。

 そんな中「人間の社会的七つの罪」の見立て型連続殺人事件が発生した。
 主人公は植民地的社会の中で、公安の刑事の職に就いている男性だ。そして敬虔なキリスト教徒である。主人公は相棒と共に、犯人に迫る。しかし思いもよらぬところから、犯人に対する情報が浮き上がってくる。
 
『あなたを見捨てた神に、信仰が誓えるのか?』

 遠藤周作の『沈黙』においても問われているこの問いに、主人公が出した答えとは? そして、読者に突きつけられるラストとは?

 是非、ご一読ください!

★★★ Excellent!!!

復興し、再建への道を突き進むアザニアで次々と起こる奇怪な事件。それを追うコウタらが見たのは犯人が残したメッセージ。その意味が紐解かれるとき、コウタは……。

事件を通して主人公へ問いかけられる問いは行間から飛び出し、余韻に浸る読者ちの心に深く切り込んできます。

最後の『   』に入る言葉、それは読み手自身が決めることです。

★★★ Excellent!!!

犯罪発生率を下げることが幸福なのでしょうか。それともそれによる死者を減らすことがそうなのでしょうか。愛しい人を幸福にすることはできるのでしょうか。心からの願いを叶えることは善行でしょうか。そんなことを考えさせられました。僕たちが幸福を与えられる唯一の人間は、自分以外にないのだと思います。切れ味の鋭さとテーマの重さ、なのに読後感は爽やかでした。素敵な作品を、ありがとうございます。