この物語を読み終わったとき、あなたもきっと、当事者になっている

【!】ネタバレ含みます。未読の方はご注意ください。


 多少遠回りしながらも正しく生き、妻子に恵まれ、平凡ながらも幸せな家庭を築いてきた男。
 そんな男のもとにある日、彼のことを「人殺し」だという一人の少女があらわれます。
 男は心当たりなどないながらも、どうして自分が人殺しなどと呼ばれるのか、知人も交えて思考を巡らせて――

 というヒキのある設定と展開の先に待ち受けるのは、彼が確かに「人殺し」であったという事実。
 そしてそれは、ある意味ではあらゆる人に起こりうる、決して他人事ではない結末であると言えます。

 人は誰しも、何かを選択しながら生きている。
 そして何かを選択するということは、何かを選択しなかったということ。

 物語を読むだけの第三者だったはずが、気づけば当事者にさせられている。巧みなミステリでした。


 短く綺麗にまとまっていることはもちろん、やわらかで丁寧な筆致にも一気読みを誘われました。
 リーダビリティの高さにも感服です。

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