ある日突然、人殺しと言われて。

木沢 俊二

第1話 人殺し、と言われて

「人殺し」


 人通りの少ない、住宅街の路地。

 私の視界には一人の少女が立っている、どうやら他に人はいない。

 着ている制服からおそらく女子高生だろう。彼女はこちらをじっと見つめながら確かにそう言った、人殺し、と。



 ——人違いかな——


 そう思って私は彼女の横を通り過ぎた。

 するとすれ違いざまに、彼女はこう投げかける。


「へえ、しらばっくれるんだ。そっか、わかった。どうなっても知らないから」


 背中に投げられたその声が気になったので、私はもう一度振り向いてみた。そしてその声の主を確認する。


 あまり近くでは見たことのない制服だ。

 そもそも女子高生の知り合いなど私にはいない。

 ひょっとしたら、頭が——の人なのかもしれない。すれ違う人全員に同じことを言っているのかもしれない。


 私はそそくさとその場を去ることにした。

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