生が官能的であるように、死も官能的である。なぜなら、死もまた、肉体であるから。私はこの作品の強烈な美しさに酔いしれながら、そういう、人間の喜悦の原則を思い知った。
しかし、死が、その官能が、そして血や病までもが、これほどまでに透明であるとは、驚愕すべきであろう。ここには、透徹と艶麗とが溶け合って、独特の美がうまれている。夢とも現ともつかぬ、あわれふかい楽園が、ここにある。
作者の文章たるや圧巻である。必ずや一読すべき美文に溢れている。切り詰められ、一見なんの変哲もない簡素を装う文体は、だがその背後に、ぞっとするような冷たい美を仄めかさずにはおかない。言葉を飾るのではなく、極限まで削ることによって、幽玄の美が一文一文に漲っている。それはまるで、二人の少女の、あばらの浮く肉体のように。