気付かない内に光るユーモア

文体は小説のようで、どこかメタ視点な印象を受ける。テンションで乗り切ることもないし、井戸端でお喋りするような直情的な印象は受けない。一見凪のような文章を書く人なのかな、と誤解し掛けるがそれは早計である。嵐の前の静けさの如く、読み進めた人の心を揺さぶるほど凄まじく面白く、引き込まれる文章である。

自分の思いを理路整然に文字にしながらもどこかから紛れ込んでくるユーモア。藪の中に隠れてその鋭い切っ先を向け、読者が気付かない内に「ぷすり」と身体に刺さっている。気付いたらいつの間にか笑ってしまっている。

世界中のムキムキを愛し、関西弁を愛し、豚キムチも後から認める。

灘乙子さんの世界はとても心地が良い。一読をオススメします。