救いは無いが怒りがある

 この物語は前日譚ということらしいが、とりあえず前日譚の範囲においては、救いがない。というよりも救いようがない。ろくでなしの母親、その恋人、底辺高校、クラスメイト、売春相手、取り巻く環境全てにしっかりと毒された彼女には、その境遇からまっとうに抜け出す術も発想も持たない。故に閉塞。きっと彼女はこれからも救われることがないのかもしれない。
 だが、彼女が憐憫の眼差しに対して抱く確かな憤りは、彼女の尊厳として尊重されるべきなのだろう。それは彼女が自身を見捨てていないという証左なのだから。
 これ以降も気になる小説だった。

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