第3話 高校
それから数ヶ月して、学校が始まった。
学校のグランドで亡くなった生徒の写真が飾られていて、そこで全校集会をした。
先生の話を聞きながら泣いてる生徒もいた。
「みんな生きててくれてありがとう」
先生が言った言葉にグッとくるものがあった。
学校は半壊で入れる状態ではなかったため、近くの大学のそばでプレハブを立てそこで授業が始まった。
プレハブ校舎の授業は、2クラスを一気に授業する形になり、先生も変わった。
クラス全員が一人ずつ英語の教科書を3行ぐらい声を出して読んでいた。
自分の番になって3行読んだら先生に言われた。
「なんで赤点のあなたがそんなに英語の発音がいいの?素晴らしい」
初めて学校の先生にお褒めの言葉をもらった。
実は、アメリカスクールに行ってる友達がいて、教わっているからとみんなの前で自慢げに言いかけた。
しかし、次の順番の人が教科書を読み始めたから言えなかった。
小学生の時の通信簿は、だいたい1で、体育だけ5だった。
給食と体育だけが生きがいの小学生の自分だから、授業で褒められることなんか一度もなかったのでかなり嬉しかった。
でも、褒められたのは、小学校、中学校合わせてもそのたった一度だけだった。
それから英語の勉強だけはやろうと少しやる気になった。
それから中学三年生になった。
周りの友達も先生も勉強して高校受験を受かることしか言わないから、クラス全体がピリピリしていた。
そんなピリピリムードの学校で、自分は正直、将来のことは何も考えていなかった。
入りたい高校、やりたいこともない。
目標がないから、勉強にやる気がおきなかった。
親父には、高校は公立しか行かせないからな!と言われていた。
授業料が私立と比べて格段に安いから中学2年頃からそう言われていた。
そういう金の話は言ってくるのに、学校の担任の先生との親との面談は一度もしていない。
仕方がないので、担任の先生には、とりあえず公立ならどこでもいいですと伝えた。
「あなたの学力では公立はどこも受からないわよ」
と、先生に言われた。
親に見放された子供だと思われたのか、その日から担任の先生は真摯に自分のことを考えてくれた。
物を作ることが好きなら公立の工業高校にしたらいいじゃないか?と言われてそこに行くことにした。
担任の先生は数学の先生でいつも自分専用の問題集を白紙のノートに1ページずつ毎日書いて宿題として自分に与えた。
そこから本気で勉強する気になり、中学三年の夏頃から中学一年の問題集からやり始めた。
朝5時に起きて勉強、学校で勉強、家に帰って眠くなるまで勉強とひたすら勉強した。
そんな勉強詰めの日々を過ごしていた時だった。
担任の先生からいきなりやばいと言われた。
受ける学校の倍率がかなり高くなっていて落ちる可能性があると言われた。
だから他の学校や私立も考えるべきと言われたが、自分はその学校しか受けませんと言い切り、落ちたら仕方がないと伝えた。
そして、高校受験の日が来た。
初めて入る高校の教室は緊張するし、テストを受けにくる人がみんな自分より頭がよさそうに見え、自信がなくなっていった。
だが、半年ほど頑張った成果を見せてやろうと心を奮闘させて、一番最初の数学のテストをめくった。
めくって最初に思ったのが、なんで問題がこんなに簡単なんだ?ということだった。
中学一年生レベルの問題ばかりだったから不思議に思った。
これに関しては、地震の被害があった地域などには学生への配慮で、その周辺の受験テストのレベルが下げられている可能性があった。
他の高校は知らないが、今、自分が受けている高校受験のテストはこのレベルの問題が多く出されるということに気づいた。
数学のテストが終わってから次の教科の中学1年生あたりの所を休憩時間を使って復習を始めた。
結局、全教科だいたいそのレベルだった。
自己採点も平均80点以上は確実にあると担任の先生に伝えたが、倍率が高かったことからなんとも言えないと言われた。
そして、高校受験が終わり、合格発表の日が来た。
高校の中に合格番号がずらっと貼られていた。
喜んでいた人も多くいたが、そんな人たちは目に入らなかった。
とにかく自分の番号を探した。
番号なかったら働くことにしていた。
親父が高校に入っても入らなくても金を稼げと、ずっと言ってたからだ。
自分の家は当然だが裕福な家庭ではない。
もっと金持ちの家に生まれたかったと考えてたら自分の番号があった。
念のためにもう一度確認した。
ちゃんと番号があった。
受かった。
担任の先生は喜んでいた。
自分も嬉しかった。
親父は高校行きながらちゃんと働けよと言ってきた。
そして、高校生活が始まった。
高校生活は正直、普通の授業に関しては、中学と何も変わらないぐらいの印象しかなかった。
ただ、工業高校の授業には、実習という様々な機械を使ったり電子部品を組み立てるような授業があった。
特に自分が好きだったのは溶接だった。
好きな授業があると学校に行くのも楽しみになる。
だが、その頃に20万で雇われていた母親が帰ってきた。
親父に家に住まわせてくれと言われたらしい。
また五人生活が始まった。
自分はその頃から引っ越しのアルバイトを土日やっていて、お金を稼いでるならご飯はあんたの分は作らないと母親に言われた。
だから、自分の飯代を稼ぐためにさらにバイトをすることにした。
平日の学校が終わってから夕方の6時から11時まで荷物の仕分けのアルバイトを始めた。
そこである先輩と出会う。
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