第6話 旅立ち

6.旅立ち


自分の城をもったことで、そこに先輩や友達を毎日呼んで遊んだり、酒を飲んだり、麻雀したり、自堕落な生活を満喫していた頃だった。



学校の先生に単位が足りないからこのままだと卒業できないと言われた。



その頃の自分は高校に行ってる意味がないと考えていたので、その場でいった。


「学校辞めます」


高校三年の秋頃に高校を辞めた。



辞めてから自堕落の生活を続けたが、ある時、自分は何をやっているのだろうと考え始めた。


目標も行き先もない人生だから生きている意味はないのかもしれないと考えて、12階建のマンション屋上から飛び降りるギリギリの場所で生きる意味について考えた。


気がつくと時間が経ち、朝を迎えていた。


その時の朝日がとても綺麗だった。



あの朝日の場所にはなにがあるのだろう。


そんな疑問から始まり、そもそもここに自分の居場所なんてないから思い切って、自分探しの旅に出ようと考え、すぐに旅に出る支度を始めた。


自分の倉庫の家には、窓があり、いつでも誰でも入れるように鍵を開けていた。


だから、置き手紙を置くことにした。



旅に出ます



それだけ書いて、財布とタバコを手に取り、倉庫の鍵を実家のポストに入れて、家を出た。



とにかく朝日の登る場所へ向かうことにした。


電車で行ったこともない所までいくとそこは大阪の梅田だった。


梅田はとにかく人が多く、観覧車が回ってるというイメージしか、覚えてないが、当時の自分はとにかく都会に見えた。


ワクワクしながら、その日は梅田を探索だけして、サウナに入った。


サウナは、寝るところが物凄く狭く、本当に寝るだけの個室、蜂の巣のような構造になっている。


寝れる場所としては、自分としてはそれだけでよかった。



朝、甲高い機械音で目が覚めた。


廊下を掃除のおばちゃんが掃除機をかけている。


そのまま起きて、外に出た。


サウナの前に少しボロい定食屋があり、そこに入った。


そこのとんかつがかなり美味しくて、それから梅田で1ヶ月ほど生活したが、2日に一回はいくペースで通った。


梅田には、パチンコ屋も多く、お金を増やす目的のために通うことにした。


通い始めて少し経ってからそこの常連と知り合いになり、話すようになったが、お金を貸した途端、会えなくなった。


そんな生活に疲れ始めた頃、梅田の駅でボーと座っていると、土方の服を着たおっさんに声をかけられた。


「暇だったらうちで仕事しないか?飯も宿もあるよ」


なんか怪しい感じだったが暇だったので、ついていくことにした。



車に乗せられてボロボロのアパートのような宿に入った。


二階建ての家で、二階には二段ベットがずらっとならび、汚れた顔のおっさん達が大勢いた。


明らかにその当時の俺が一番若造だった。


明日から仕事だから飯を食えということで、一階の食堂でうまいとは言えない晩御飯を食べた。


朝、仕事が始まった。


コンクリートを固めるためのベニア板を運んだり、掃除をひたすらやらされたが、つまらなかったので一週間でやめた。


やめる時、札束を数えていた自分をスカウトした人に話をした。


一日1万円の日当だったので、やめる時に7万円もらえると思っていたが、渡されたのは3万だった。


明らかにおかしいので、ごねると四万になった。


こういう形で仕事をするとこういうことになるんだなと良い経験をしたと考え、前向きに捉えて、その場を後にした。


結局、また梅田に戻ってきてしまった。


暇だからスロットでも打とうと店に入って打ってたら、一つ飛ばした横の台にイカツイ兄さんがパッと座ってすぐにボーナスを引いていた。


だが、その兄さんはスロットを始めたばかりなのか10ゲーム以上ボーナスを揃えられなくて困っていた。


見かねて声をかけた。


「押しましょうか?」


睨みを利かせていたイカツイ兄さんの顔がいきなり笑顔になった。


「ほんまに?!頼むわ」


あっさりボーナスを揃えるとありがとうとコーヒーをご馳走になった。


それからイカツイお兄さんの台のボーナスを揃えたり、目押しのコツを色々教えていると飯でも行かないかと誘われたので行くことにした。


適当な居酒屋に入ってビールを飲み、今の自分の状況を話すと真摯に話を聞いてくれた。


それからイカツイ兄さんが


「俺はキャバクラで働いてるんだけど、やってみないか?」


風俗は何回か行ったことがあったが、キャバクラは全く行ったことがなかったので、どんな仕事なのか色々聞いているうちに面白そうな仕事だなと感じて、仕事を紹介してもらうことになった。



それからすぐに行動に移し、イカツイ兄さんの知り合いの寮ありの店で働き始めることになった。





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