第5話 風俗
生活がかかっているからパチンコは負けられない。
ただ、一度でも負けると悔しくてその都度、ノートに取るようになっていた。
それからパチンコ収支をつけるようになった。
気づいたら、バイトをしなくてもパチンコだけで稼げるようになっていた。
ある時、大きく勝てたので前から行きたかった風俗に行くことにした。
といっても、高校生が風俗に行くにはそれなりの勇気がいる。
すんなりとお店に踏み込む勇気がないので声をかけてもらうまでお店の前をうろちょろした。
ピンクに怪しく光る店舗の前をとにかく行ったり来たりしていると
「お兄さんどうですか?」
自分はえっ?みたいな反応をしたが、心の中では、オッシャー!!という心の叫びをあげていた。
うろちょろ作戦が成功して声をかけてもらい、お店に入った。
お店に行ったらサウナのような悶々とした匂いと暑さを感じた。
店員にいわれるがまま、言われた金額を出し、待機場で待つことになった。
待機場で待つ時に軽く緊張で手が震えていた。
店員に呼ばれて部屋まで案内された。
部屋の扉を開けると綺麗なお姉さんがいた。
お風呂に入りましょうとお姉さんが服を脱ぎ始めた。
そのお姉さんの太ももには大きな鯉の刺青があった。
ヤクザの女はこういう刺青があるのをドラマで見たことがあったので、少し怖かった。
だが、お姉さんの裸を見た瞬間にその恐怖心は消えた。
なんて白くて美しい体なんだろうと心の中で思った。
お姉さんが俺の手引いた。
たぶん、顔や素ぶりで若いクソガキということは、わかっていたのだろう。
自分はなすがままにされた。
今考えれば、初めて行った風俗はソープだった。
普通は下調べやジャンルなどを決めてから行くものだが、高校生の自分にとっては、性欲を満たせればなんでもよかった。
初めての風俗を乗り越えるともう次の店からは余裕で店内に入れるようになった。
その頃から酒とタバコを覚えた。
酒は先輩から、飲んでみろと勧められて飲み始めた。
酒自体は美味しくはなかったが、先輩と飲む酒はうまかった。
タバコは親から買ってこいと言われて、買うついでに自分の分も買ってみた。
ゲホゲホして苦いが、大人になった気分になり、自分がかっこよく見えた。
バイトの帰りにパチンコを教えてくれた先輩とチンピラが来て逃げた友達と三人で飲んだ。
そこで初めて日本酒を飲んだ。
その日本酒は水のような飲みやすさで、ガブガブ飲んでしまった。
二人と別れ、原付で帰っていたが酒のせいかテンションが上がり、スピードを出しすぎてカーブが曲がりきれず、壁に激突した。
壁に激突する瞬間、世界がスローに見えた。
気づくと地面に寝てた。
体が全く動かない。
誰かが来て何か話しているが、よく聞き取れなかった。
そのまま救急車で運ばれて、ベットの上で一夜明かした。
朝起きると親父がいた。
包帯でぐるぐる巻きの自分に
「入院は金がかかるから今すぐ退院しろ」
自分はわかったといって、車椅子乗ってそのまま家に帰った。
家に帰ると母親と妹がいた。
母親に自分が学校をサボりまくってることを言われた。
親父には、この家にはもう帰ってくるなと言われた。
自分には寝る所がないので、親父の使っていた倉庫を貸してくれと頼んだ。
倉庫といっても、ものすごく小さな所で、地震があったときに親戚の足の怪我したおじちゃんが使っていた所で、風呂やトイレなどはない。
寝るスペースは3畳ほどで、コンクリートに囲まれた小さな部屋だったが、自分の城があることが嬉しくてその時は、とてもはしゃいだ。
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