第14話 一線を越える



一口目が口に入った瞬間、今まで飲んだことのない味がした。


舌が痛く、味が麻痺している。


とにかく気合だ!と心に念じ、とにかく飲み始めた。


周りの人はにぶい笑顔で一気コールをしている。


そんな一気コールの音楽を聞きながら涙目で飲み始めたが、半分ぐらい飲み始めて、吐きそうになりピッチャーから口を離そうすると


ユリさん「ピッチャーから口を離したらお前の負けだからな!」


そういいながら、ケタケタ笑うユリさんの顔をピッチャー越しに見て、さらにやる気が上がった。


絶対飲みきってやる!と決心した直後だった。


とんでもない吐き気と共に、ピッチャーにゲロが逆流した。


ピッチャーのどす黒い色とゲロが混ざり合いさらに気持ちの悪い色になっている。


それでも、自分はピッチャーから口を離さず、死んでも飲んでやると言う決心の元、ゲロごとピッチャーの中身を飲み干した。


意識が朦朧としていたが、すぐに言った。


「これで認めてくれますよね?」


ユリさんにそういった後、自分はその場でぶっ倒れた。


気づくと、店の非常階段で寝てた。


服はゲロまみれ、あちこちにゲロが巻き散らかり、その場にいるだけで吐きそうになった。


朝日がさしていることに気づき、店に戻ると、店長と主任が寝ていた。


ユリさんの伝票を見ると、30万ぐらいになっていた。


自分は売り上げのきっかけを作り、それを成し得たらしい。


それを見て、三人で店で爆睡した。



店長「おい!おきろ!」


店長の酒やけの声で起こされた。


店長「昨日はよくやった!お前根性があるな!」


店長からお褒めの言葉をもらった。


主任からは、お前みたいな新人初めて見たわ期待してると言われた。



そんな話をしながらすでに夕方近くだっため、寮に帰らず、三人でサウナに入ることにした。


それから店のオープン準備をして、二日酔いのまま店を開けた。


店を開けるとすぐにユリさんが来店してきた。


ユリさん「昨日のあんたかっこよかったよ!まぁ寝ゲロ吐きまくってたけどね」


ケタケタ笑うユリさんに自分も合わせて初めて心から笑った。


それから自分のあだ名が寝ゲロマンになったが、それよりもあのどす黒いピッチャーを飲んだことが評価されたのか、周りからの目が変わった。


よくあのどす黒いピッチャー飲んだよね!根性あるよね!ある意味伝説だわ


いろんな人から噂が流れたらしく、自分は悪い気持ちにはならなかった。


周りの人の意識が変わり、他人から知人、友達、仲間へと意識が変わった気がした。


全てに対して一線を超えたような感覚がした。



それからユリさんとは仲良くなり、プライベートのこと、仕事のことや細かいアドバイスなど、色んなことを教わるようになった。


ただ、ユリさんとかなり仲良くなかったことで問題が起きた。



超えてならない一線を超えてしまう。

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