第9話 新店舗立ち上げの難しさ
9.新店舗立ち上げの難しさ
新しい店舗を立ち上げてすぐに問題は発生した。
まずは、キャストが足りないこと。
店長の仕事だったために、文句はあまり言えなかったが、店長はオープン前にキャストは足りなくなるから、客が待ってる間にお酒を作ったり軽い会話で繋げてくれという指示を出していた。
客を待たせるにしても10分が限度だが、キャストが10名前後しかいなかったため、かなりの新規客を帰らせてしまう結果になった。
あとキャスト関連では、後々問題になったが、給料の割合設定を高くしてしまったために、売り上げとのバランスが悪く、純利益があまりでなかった。
キャバクラは、ホストなどと違い、売り上げを上げていなくても時給が発生している。
できる限り、キャストの質をあげて、単体でしっかり売り上げを上げさせるようにしないとお店が潰れることになる。
自分で客を持っているキャストなどは、元々結果を生み出す力があるので、歩合や高い時給にしてもしっかりお店に利益を生むが、経験浅く客を持たないキャストは、育てるかヘルプ要員にして人材として残す形を取ることになる。
この結果を出しにくい人材を多く抱えるお店は潰れるということになる。
そういう人材に新規の客をつけて、育てて結果を出せる形を早く取りたいので、新規オープンの時点でかなり値段の安い最初の30分1000円になったのが店長が考えた成長プランだった。
ただ、金額の安さでそこそこ新規の客がきたが、逆に客の質が悪くなってしまった。
全く金を持っていないような人、若すぎる客、安さだけできた客など、次に繋がりにくい客まで新規にきてしまい、結果、キャストから苦情がでてしまった。
あと、店内の準備を万全にしたと考えてもいざ本番がきたら、とにかく足らないものやどこにあるかわからないという物が多く発生した。
これは予行練習を疎かにした結果だった。
頭で想像してやる分にはある程度限界がある。
一度全てをやってみて、再確認することが重要だった。
さらに、外に出て指定されたキャッチ場所でやっていると他店のボーイがいきなり喧嘩を売ってきて、ここは俺たちの場所だからあっちいけ!と言われ、そのことを店長に話すと
「そこは俺たちの場所だから譲るな」
と言われ、そこでキャッチをやっていると、また同じボーイがきて、殴り合いの喧嘩になり、警察がきて交番でお説教を食らう羽目になった。
結局、そのキャッチ場所はこちらのミスで違う場所だったらしく、自分は殴られ損だった。
そんなことや諸々問題多発したことにより、男同士のスタッフの連携もかなり悪くなった。
事前に飲み会や顔合わせなどしっかり話し合いなどは、ほとんどしてなかったことにより、意思疎通ができていないので、相手の考えや尊重する気持ちがなくなり、お互い牙をむき出しにして働くような環境になってしまった。
とにかく新店舗をオープンさせて1週間はとにかく地獄のような環境だったのを今でも覚えている。
それからしばらくして、新店舗も落ち着いてきた頃にスミレからメールがきた。
「離れて寂しくて、他の男の人が好きになりました。別れてほしい。」
という内容だった。
自分は、仕事に没頭していたので、ほとんどスミレのことを考えていなかった。
今の状況で離れ離れで付き合えるわけもないなと判断して、わかったとメールを返した。
流石にショックであまり仕事に身が入らなかった。
まだ18歳のクソガキだった自分はあまり恋や恋愛などは経験してこなかったこともあり、何をしても気持ちが入らないので、仕事を辞めることにした。
仕事を辞めて寮を出てた。
自分に残っているのは、ほとんど使ってこなかった給料と自分の体だけ。
またどこかにいこうかなとふっと考えた。
そういえば、自分のお店によくきていた常連さんが名古屋は良い街だ!と言っていた話を思い出し、そのまま名古屋に向かった。
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