ティーガー戦車異世界戦記 ~小さな希望を紡ぐ姫と鋼鉄の王虎を駆る勇者~

作者 ニセ梶原康弘

「チート」が「インチキ」と言う意味だと知っている人たちへ…

  • ★★★ Excellent!!!

 異世界召喚された者に強力無比なスキルを与えられるストーリーを叩き台にしつつ、そのスキルを徹底的にチートの正しい意味であるインチキとして扱う、昨今の流行に対する莫逆の物語だと私には感じられました。

 剣と魔法の世界へ重戦車で乗り込むのだから主人公のテツオも十分チートと言えるのですが、テツオと敵であるチート勇者との対比が面白いです。

 チート勇者は自らの欲望に忠実で、特に闘争や性欲などの本能に基づくものに走っているのに対し、テツオの行動はそれらに向かっていません。

 魔法も剣も歯が立たない重戦車を持っているのだから、俺TUEEEや無双やチーレムの物語であれば単独で突撃して粉砕していくだけの物語になる所をテツオは防戦にしか重戦車を用いません。

 その点に私は惹かれます。

 ただ力で粉砕するような戦いがあった事は作中でも語られています。チート勇者はそうしたのだと。

 チート勇者を上回るものを持ちながらも、それをしないテツオの対比は痛快です。

 きっとチート勇者が欲しがったものは何でも良いから賞賛だったのでしょう。

 でもテツオが求めたものは共に笑い、泣き、讃えられる存在だったのだと感じます。誰でも良い訳ではなく、肩を並べて歩ける仲間、一つの食卓を囲める友達を求めたのだと想像できます。

国を追われた魔物達と共に逃げるという選択をした事、姫を陣頭に立てて復讐戦に挑まなかった事に、彼の優しい人柄を感じます。

 物言わぬ重戦車すらもその輪にある、強さと優しさを備えた傑作です。

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