ローマ帝国の平和は、この最強コンビにお任せだ!


 いきなりポンペイの大噴火という歴史的天変地異から始まる本作。

 主人公は、というより主人公を押しのけて物語の中心にいるのは、女神のように美しく、台風のように荒々しく、お姫様のように人使いが荒い、青い瞳の令嬢コレティア。
 彼女とコンビを組むのが、主人公にして、コレティアの護衛を仰せつかったルパス。彼は、強いし、責任感はあるし、なにより頼りになる男。

 大噴火の中、帰郷したコレティアと彼女の護衛ルパスは、港で「この噴火はアグニの呪いだ」という噂を耳にする。アグニといえば、インドの神様。その名がなぜ、ローマで出るのか?

 そのちょっとした疑問から二人はある殺人事件に巻き込まれ、いや正確には巻き込まれたのはルパスで、コレティアは自ら首を突っ込んでいくのだが、そこから二人は帝国を揺るがすような巨大な悪へと立ち向かうことになる。


 とにくかコレティアとルパスの二人の関係が楽しい。

 美貌の令嬢であるにも関わらず、どんな事件にも興味津々。知的で、乱暴で、高貴にして華麗な、まさに戦女神。
 彼女の護衛のルパスは、そんなハチャメチャなお姫様に、心の中で文句をたれながらも、時に彼女の盾となってその身を守り、火急の場合は腰のグラディウスを抜き放って奮戦する。

 が、二人の間には表面上はまったく、相手を労ったり、思いやったりする態度はなく、出てくるのは毒舌ばかり。ルパスはコレティアの美貌に興味はないし、コレティアもコレティアで、まるでルパスを飼い犬かなにかの如く扱う。

 が、いったん事件が起これば、二人の息はぴったり。二倍三倍の戦闘力でつぎつぎと危機を脱してゆく。


 本作は、舞台となるローマ帝国をあちらこちらへと旅して、この二人が事件の謎を解決してゆく物語である。


 当時の風習や文化が、まるでその場にいるような臨場感で語られ、食事や風景、建築物や服飾にいたるまで詳細に描かれている。ローマ人、ユダヤ人、ゲルマン人といった多民族の風俗や生活、宗教に至るまで丁寧に解説され、まるで精密に構築された美しい異世界を旅しているようだ。

 広大なローマ帝国を、最強コンビが事件と謎を追って駆け巡る。
 文句をいいつつも、必ずコレティアについてゆき、彼女を守るルパス。
 憎まれ口を叩きつつも、絶対にルパスを手放さないコレティア。

 行く先々の事件、危機また危機の連続へ率先して飛び込んでゆくコレティアと、巻き込まれてぼやきつつも絶対に引かないルパスの最強コンビ。
 横たわる巨大な陰謀。歴史の闇。そして、二人の、それぞれの過去。

 そんな闇も謎も悪も陰謀も、そして気に入らない男たちまでも、片っ端から蹴り倒して昏倒させるコレティアのハイキックの爽快感!


 もしあなたが、『ローマ帝国』への『刺激的』な旅行を計画しているのなら、本作はうってつけである。



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