握られない手、その静かな終わりに

おそらく、外彦という主人公は「ヒーロー」から程遠い存在だろう。
剥き出しの弱さを抱え、ただひとりの少女のために闇へと飛び降りることも厭わない、危なっかしい存在。
それでも、その危なっかしい存在から目を離すことができない。外彦という主人公は目を離すことのできない人間なのだ。

物語を追う中でどことなくーーいや、何やら嫌なざわめきをあなたは感じるだろう。
握らない手、周りの目、時折入る不穏な記憶……。
その答えとは如何なるや?

あと「少年少女が前を見る話です!」と作者が宣伝しており、途中まで「後ろ向きにムーンウォーク状態じゃねえか!!」と何度か叫んだが……いい意味で「前を向く話」だった。その言葉に偽りなしだ。