ただ甘いだけじゃない。リアルな部分にもご注目を。読み応えありますよ?

 じれじれもだもだ両片思い夫婦の物語――ということは、もう他の方がたくさん書いてらっしゃるので、私は別の魅力をお伝えしようと思います。

 すれ違いっぷりが見事な領主夫妻の恋愛模様は、文句なく可愛らしく面白いのですが、この物語が素晴らしいのは、「領主夫妻として生きているふたり」がリアルに描かれていることだと思います。

 お互いの想いを理解していないために、ふたりの仲はすんなりとは上手くいきません。しかし、ふたりに共通する「領民への思い」が、ふたりを近づけてくれるエピソードが多くあります。

 その中で、この時代の人々の暮らしぶりや農作物のことなどが丁寧に描かれています。(おそらく作者様は、相当な知識をお持ちだと思います)
 両片思いのハッピーエンドが見え隠れしている物語ですが、リアルであるために重みがあるのです。
 そして、真摯に領民を思うふたりには、とても好感が持てます。

 都合よく、何かがあったり、何かが起きたりはしません。きちんと理由があり、裏付けがあり、それで、簡単には上手くいかないのです。

 ――だからこそ、主人公夫妻を応援したくなるのです。

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