恋というスパイスが、パンツを最高級ディナーに変貌させる。

パンツはただの布です。
もしくはポリエステル? ポリウレタン? よく分かりません。
とにかく、ただの布地です。味はしません。喉に詰まらせると死にます。虚無です。

しかし、これが好きな子のパンツとなれば話は別です。
ただの布地は、最高のディナーに変貌します。噛み締めるほど、甘い味が舌の上に広がっていきます。恋の口噛み酒です。

さらに、それが脱ぎたてであれば……もはやそれは、必殺料理(スペシャリテ)です。食べた衝撃でこちらの衣服が弾け飛びます。凶器です。

好きな人のパンツっていうのは、それくらい凄い物なのです。青春の象徴なのです。

一見風変わりで変態としか思えない水沢くんと、一ノ瀬さんとのやり取り。

しかし、物語を読み進めていく内に……やはり、変態だということが再認識できます。
一ノ瀬さん、騙されるな。そいつは、一級の雰囲気詐欺師だ。哲学的変質者だ。

……でもね、例え変態だったとしても、惚れちまったもんは仕方ないんですよ。恋は盲目、パンツをモグモグなんですよ。

純文学的で情緒豊かな風景描写と心理描写の中に織り込まれた、生真面目風な変質者。これはまさに、青春小説の新境地。

是非とも一読の上、笑い、唖然とし、不覚にもちょっとときめいたりして、最後は「やっぱり変態だああああ!」と叫んでいただければと思います。超お薦めです。

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