当たり前のようで当たり前じゃない『ありふれた日常』と『ささやかな幸せ』

ホラー作品といったら、怖さが描かれているもの。

こちらのお話も冒頭から不穏に澱んだ空気が漂い、じわりと背筋を撫でるような恐怖が満ちています。

しかし、この作品の特徴はただ怖いだけではない点。
得体の知れぬモノに脅かされる恐怖だけでなく、人間の闇が生み出す『人怖』要素も存分に含んでおります。

そのため、恐ろしさ以上に悲しみと痛みが刺さり、読み進めていく内に震えながら涙するという奇妙な状態になってしまいました。

登場人物達を脅かすのは、怪異と『無関心』。
当たり前の日常が何なのかもわからなくなった中、それでも手を伸ばし掴もうとするのは『ささやかな幸せ』。

読み終えてタイトルを改めて噛み締めると、じわりとこみ上げてくるものがあります。

もちろんキュンキュンなラブ要素もあり!
更に、武州作品ファンには嬉しいサービスシーンも♡

怖いだけじゃない、胸を切る悲しみを乗り越えた先に生まれる感動があたたかな余韻を残す、新感覚ホラー作品です。

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