戦慄の先に待つものは……

これぞエンタメ! と呼びたい物語です。

その幕開けはトラブルが渦巻くリアルな中学の教育現場から。
過酷な職場に潰されかかっていた行橋先生は、本来の情熱と優しさを振り絞って、一人の生徒を救おうとしていました。
彼の熱意に応えたのはボランティアコーディネーター(通称ボラコ)の香川さん。
しかし二人が訪れた不登校状態の田部君の家には、どこか禍々しい匂いがして……。

  * * *

まず現代の中学教育が抱える問題を、物語の背景として描き出す手腕に驚かされます。
さらに心優しい熱血教師の行橋先生と、正義感溢れる天然乙女の香川さんの甘くコミカルな恋の行方も読みどころです。
そしてホラーシーンの筆の冴えは「背筋が凍りつく」という表現そのもの。そちらがダメな方は本気で止めます。
ほんとうに怖かった。(もうダメかと思った)

ただし最後まで読まないと、このあたたかな至福の読後感には絶対にたどりつけません。

この作品は、読んだ人を幸せにするホラーです!

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