ただ、無常にすり減って行くセカイで二人は出逢った

「継王蒼機ザナクト」という物語は、事あるごとに"リソース"という概念を持ち出してストーリーを駆動させて行く。
それはエネルギー残量を厳密に管理しなければならない戦闘レベルでもそうだし、
そもそも登場人物たちが身を置く闘いの図式からしてそうだ。

既にあるリソースを消費する形で、物語は進んで行く。
あるいは元々在ったものさえ擦り減らして、後退して行く。

"既に滅んだセカイ"同士が喰らい合わなければならないという、壮大なゼロサム形式のバトルロワイヤル。もう新しい何かを造り出そうとする働きを止めてしまったセカイで、それでも少年と少女は出逢った。
出逢って同じ時を過ごし、共に肩を並べて戦った――――

もしもこの何もかもが停滞したセカイで積み上げられて行く何かが有り得るとすれば、それは二人の積み重ねて来た時間であり、経験であり、記憶かも知れない。

だからこそ
ただ、無常にすり減って行くセカイで出逢った二人の行く末こそが、きっとこの閉ざされたセカイの出す答えにも直結するはずなのだ。
何故ならこれはセカイ系なのだから!

***

作品を形作る表面的な要素以上に、ストーリーとテーマこそがセカイ系としての濃度を高めていると感じる一作です。
是非、あなたも読んでみては!

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