いいか諸君。これがファンタジーだ。

幻想的。魅力的。まるで絵本を文字に起こしたみたい。
読んで最初に抱いた印象がその三つです。

描写がね、凄く丁寧で、センスあるんです。
誰だってちょっと読めばすぐ、この物語の世界に入り込めることでしょう。過酷で、命がけで、だからこそその幻想的な描写が際立つんだと俺は思う。世界は厳しくも美しい。柄にもなくそんなこと思いました。

そんな世界観の中で、タイトルにもなっている「クジラのかみさま」はある種の象徴のように扱われているようで。言い伝えのような優しい紹介からその存在をぼんやりとイメージさせて、最後には登場人物の少年が抱いているそのイメージそのままに堂々と現れてくれます。
ここでまた筆者の描写力が生きるわけですよ。いやもうね、名前のとおり。かみさまが来た。俺は本気でそう思った。救いに来た。
少年が問いかけるよりもずっと前に俺は「ああ、彼らは神様の遣いだったんだなぁ」なんてことを呟いておりました。

子供に読み聞かせるおとぎ話のような、絵本のような。
それは決してチャチなもんじゃなく、それだけ心を鷲掴みにする魅力と強い世界観があるということです。ファンタジーの世界はいつだってこういう魅力がなくっちゃいけないと思う。

最高でした。

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