はちきれ!じぇすまいか幼稚園

 ここはじぇすまいか幼稚園。

 元気いっぱいな園児たちが、今日もお庭で遊んでいます。


 あっ自己紹介がまだでしたね。

 私はレベッカ。幼稚園教師で、園児のみんなからは『レベッカせんせい』なんて呼ばれてます。


「うわーん! レベッカせんせー!」


 あらあら、どうしたのかしら。

 園児服を着た男の子が、泣きながらこっちにしがみついてきたわ。


 ちなみにこの子はマリカくん。

 髪の毛が長くて、女の子みたいに可愛らしいお顔をしているけど、これでもれっきとした男の子。

 クラスでも目立つ子だけれど、実はちょっぴり泣き虫で甘えん坊さん。


「どうしたの、マリカくん。またいじめっ子のランマくんにいじわるされちゃった?」

「ううん、ちがうのぉ……」


 マリカくんは通園バッグからスマホをとりだして、画面をこっちに見せてくれました。


「スカートをめくってちん◯ん出した動画をアップしたらアカウント凍結されちゃった」

「そりゃそうなるよ!?」


 マリカくんは動画投稿サイト“WeTube”が大好きで、自分でも動画を撮影してアップロードしているみたい。

 幼稚園児ウィーチューバーなんてイマドキだけど、お姉さんは少し不安になっちゃうかも。


「えっとね、マリカくん。どうしてそんなことをしちゃったのかなー?」

「どうがの再生数が伸びなくて、つい。幼稚園児のちん◯んならセーフかなと思って」

「それを自覚してる時点でだいぶアウトだと思うけれど……」


 さらに聞いてみると、動画タイトルは『男の娘DYだんしようちえんじがおぱんつを脱いでみた』だったらしい。

 なにその犯罪臭しかしない動画。うp主のほうもアレだけど、見にくる方も相当ヤバそうだわ。


「そ、そんなに動画を見てもらいたかったら、もっとマイルドな内容にしようね」

「バーチャル美少女に受肉したりとか?」

「うーん。VTuber界は母数が増えすぎて、今さら新規が付け入られるような隙はないと思う……」

「じゃあ、猫の成長日記を動画にするとか?」

「まるおくん可愛いものね。でもヒ◯キンさんをパクるのもやめようね」


「……ところでせんせー、なんでそんなにウィーチューブに詳しいの?」

「なっ、ナンデカナー? 不思議だねぇー?」


 休日はもっぱら家に引きこもって動画見てるなんて言えない。


「ねえ、マリカくん。動画を撮るのは楽しい?」

「う?」


 私が目線の高さを合わせてから質問すると、マリカくんは悩んだりせずに即答した。


「うん、たのしいよ!」

「そっか!」

「……でもね、でもね?」


 まだマリカくんは何かを言いたげだ。

 私は素直に耳を傾ける。


「“人気の目安”になるのは結局、再生数とかチャンネル登録者数とかっていう数字なわけじゃん。いくら内容が面白くたって、それを稼がないとランキングには載ることはできないし、逆にランキングに入らないと再生数も伸びにくいもん!」

「えっ、うん」

「これは動画だけじゃなくて、小説やイラストにも言えることだよ。ボクたち作り手がいくら“オモシロいもの”を作ったつもりでも、ランキングを上がって人目につかなきゃ、ボクたちの作品はそもそも『オモシロいかオモシロくないか』っていう天秤にすらかけてもらえないんだーっ!」


 一度でも創作をしたことのある人間なら誰しも思う、悲しき慟哭だった。

 とても幼稚園児の口から出るセリフとは思えない。


「……きいて、マリカくん。キミの言う通り、自分が生み出したモノをより多くの人に見てもらうためには……結局、ポイントを稼いでランキングをのし上がるしかないわ。


 でもそれは作り手側の都合。受け手はそんなことの為に作品に触れるわけじゃないのよ」


 一人の大人として。

 それ以上にファンの一人として、私はまっすぐにマリカくんの目を見て告げる。


「私が──みんなが期待しているのは、キミの生み出した作品の“オモシロさ”ただそれだけよ。べつに数字を見にきているわけじゃないわ」

「そうなの……?」

「もちろん、数字やランキングを気にしてもいいの。けれど、それが目的になってはいけないわ。だってキミが見せたいのは、『キミが作ったオモシロイもの』でしょ?」


 そこまで喋って、私は急に顔がカァッと赤くなってしまった。

 幼稚園を相手になんて真面目な話をしてしまったんだろう。しかも最後、軽くドヤ顔まで決めてしまったわ。


 それでもマリカくんは、真剣に私の話を聞いてくれていたみたい。

 さっきまで落ち込んでいた顔には、いつもの自信満々な笑みが舞い戻っていた。


「わかった! ボクもうお◯んちんを出して再生数を荒稼ぎしようとするのはやめるよ!」

「うんうん、その意気だよマリカくん! ランキングなんて気にしないで、キミの好きなようにやればそれでいいんだよ!」


 いい感じに話もまとまったところで、

 それでは最後のご挨拶。


「「読了、ありがとうございました〜!」」


「このお話がよかったら、応援&☆評価をお願いします!」


「作品のフォローもぜひぜひ!」


「ツイッターもやっておりますので、作者ページからフォローもお待ちしてます♪」


「もし☆1000コ超えたらレベッカせんせーがおっぱい見せてくれるって」


「いや見せないよ!?」


 なんだかんだ言いつつ、やっぱり自薦はとっても大事ないつもの創作界隈なのであった。

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めめ処 東雲メメ @sinonome716

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