第4話
そう。私達はこの夏休み、余りやらないスマホゲームに、手を出してみようとチャレンジ中なのだ。
お互いが最も得意であり好きな、このFPSというジャンル限定で、色々な会社が作ったFPSのアプリを片っ端からプレイし、感想を言い合っている。スマホが普及してから皆スマホでゲームを済ませるようになってきたけれど、携帯端末なんてしょぼいハードで、本当に楽しめるの? と疑問に思って。
「やっぱり、据え置き型かな。スマホゲームはちょっと、しょぼい……。スマホでアクションゲームは……。あんまりお勧めしない」
「まあ普段ゲームに、据え置き型で慣れ親しんでるプレイヤーからするとねえ。グラフィックとかフィールドの広さで誤魔化してるけれど、FPSとかのアクションゲームの場合、プレイヤーの動きをどこまで反映させられるかが、いい作品になれるかの別れ道じゃないのかな。没入感って言うかさあ。ほんとに戦場に立ってる気分に、どれぐらいさせてくれるかっていう臨場感が、ゲーム全般に言える事かもしれないけれど、大事だと私は思うなあ」
ちょっと語ってしまったと恥ずかしくなりながら、誤魔化すように麦茶を飲む。
だってショボいもん。スマホのアクションゲーム。
それ以外のジャンルのゲームなら、基本料金無料の割には、楽しめるなと思う作品は沢山あるけれど。
こういう、瞬間に生きるジャンルのゲームとは、据え置き型でやった方が絶対楽しい。それを知らずにスマホで満足している多くの同年代のプレイヤーを見ると、哀れに思ってしまう。……完全に据え置き型派の意見だし、こんな事言ったら喧嘩になっちゃうけれど。
なっちゃうし、単なる私の一意見を正義とするように、スマホゲームのプレイヤー達を否定する事もしたくないけれど、でもそれでも、敢えて心では思っていたい。
やっぱり本気で遊ぶなら、据え置き型だ。
プレイヤーの直感を、どこまでも忠実に再現してくれる操作性。
据え置き型だからこその高いグラフィックと、きっちりと安定したゲームバランスという、高品質。
その環境の上で初めて体感出来る、没入感と緊張感。
本気で遊ぶのに、カジュアルゲームなんてお呼びじゃない。
「まあだからと言って、負けっぱなしで終わるつもりもないけどねえ」
ほったらかしになっていたスマホを、もう一度構える。
夕子は、不思議そうに首を傾げた。
「据え置きでやらないの? 折角家にあるのに」
確かにちゃぶ台の向こうのテレビの前には、既にセッティングを終えた据え置き型のゲームがある。入れているソフトのジャンルは、勿論FPS。
「んー。この一戦が終わったら。操作がいかにカクカクなのかはよく分かったから、そのラグを生めるように三歩ぐらい先読みする動きを取ればいける……筈」
「据え置きなら負けないのに?」
「据え置きでは負けないのにスマホでは負けるって何か悔しいじゃん。スマホゲームのくせに」
「本音が出てるし……。負けず嫌いだよね」
「夕子だってまた構えてるじゃん」
膝の上でこっそり再戦に向かおうとしている、夕子の肩を小突く。勿論軽くだ。
「あたっ」と可愛らしい声を上げながら、夕子は笑った。
私もへへ、と笑うと、スマホの画面に意識を向ける。
要は私達、ゲームが大好きって事なのだ。
――その一瞬、そのたった一発の弾丸に、全てをかける。
さあ。もう一度。
火花を刹那散らせ。
火花を刹那散らせ 木元宗 @go-rudennbatto
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます