第2話


 った。


 確信しながら再装填リロードする。


 長射程ロングレンジで輝くのが狙撃銃スナイパーライフル、バランスの取れた射程と、使い勝手のよさが短機関銃サブマシンガンなら、至近距離での撃ち合いでは最強なのがこの、散弾銃ショットガンだ。この間合いならバラバラと威力を分散するように弾を撒き散らす短機関銃サブマシンガンより、単発式かつ射程は短いが、強力な一発を放てる散弾銃ショットガンが勝る。


 その一撃の狙いは、黒人の心臓。


 助かるまいと勝利を確信し、目の前で再装填リロードをしたのだが……。


「なぁーんで生きてんのぉー!!?」


 マジ有り得ん!


 丁度再装填リロードを終えた所でむくりと起き上がった黒人が、構えた短機関銃サブマシンガンをぶっ放してきたのだ。


「死ぬでしょ普通死ぬでしょ普通死ぬでしょ普通死ぬでしょ普通」

「……このタイトル、散弾銃ショットガンの威力弱めに設定されてるみたいだから……」

「にしてもこの距離でkillキル取れないっておかしいでしょあだだだだだだだ!!」


 ぽつりと横から落ちる声に返しながら必死に回れ右をして引き返すも、背中とお尻を穴だらけにされていく。


 あっと言う間に視界の縁が、飛び散ったような赤に染められた。


 死のサインだ。


 これが視界一面を覆うと、私は死ぬ。


「とぉうっ!」


 破った窓にもう一度飛び込み、家の中へ逃げ込んだ。そのまま逃げ出すと見せかけて窓の左手の壁に張り付き、黒人が来るのを待ち構える。


 奴は立ち回り方から、初心者だ。


 最初に私を攻撃して来た際、私がロングテーブルからバスルームへ移動している間も移動せず、あの窓の向こうから射撃を続けていたという事は、私を見つけた途端そこから棒立ちになって、ただ撃ちまくっていたという事になる。それでは余りにお粗末だ。躱されたと分かった以上、次の策を打たなければ、そう簡単には勝利を掴めない。実際私に煙幕スモークを放つ隙を与えているし、玄人とは言えない判断力だ。そもそも撃ち始める距離が甘い。もう少し詰めてから撃てば、多少のダメージは与えられただろうに。つまり短機関銃サブマシンガンの射程を、いまいち分かっていない事になる。


 そんなビギナーにこの私が、まさか押されているだなんて!


「甘いわ小僧こぞぉ!」


 読み通り馬鹿正直に後ろを付いて来ていた黒人が、よっこいせと窓枠を跨いで屋内に侵入しようとしてきた所を、今度こそ仕留めてやると散弾銃ショットガンをぶっ放した。脳天をどかんとやられた黒人は、今度こそ倒れる。


「あーこんな間抜けな人に追い込まれるなんてぇえー……!」


 窓から狙撃されないよう、すぐに壁へ身体を引っ込めると、ショルダーポーチから医療道具を取り出して治療する。視界の縁を覆っていた赤色が、すうっと消えた。ほっとして息を吐くと、窓枠に正中線を置くように垂れ下がっている、黒人の死体を漁る。銃に弾薬、医療道具など、使える持ち物は全て頂く。


「げへへぇ。生き残るのは儂じゃあ……!」

「…………」


 ひんやりとした視線を横から感じるが、今は無視! 銃声でここに人がいると辺りに知らせてしまったんだから、また別の人に狙われる前に移動しないと!


 身を屈めてリビングへ向かい、ドアから出ようとドアノブに手を伸ばした。


 が、それを遮るように、爆発音が耳を襲う。


 ぐらりと一瞬視界が揺らぎ、身動きが取れない瞬間が生まれた。


「く……っ衝撃手榴弾コンカッション……!?」


 正確には、衝撃手榴弾コンカッショングレネード。爆発を起こし、それによる衝撃波で、ダメージを与えるタイプの手榴弾だ。あと一歩外に出るのが速かったら、吹き飛ばされて死んでいた。


 もしかして今倒したあの黒人、市街地から誰かに追われて、この家に逃げ込もうとした所に私と出くわした訳!?


ちょうめいわく!」


 意を決してドアを開けると、上体を上げながら駆け出した。どうせ市街地のある左手から投げて来たんでしょコンチクショ――。


 ズダァンと、空を割るような、一発の銃声が轟いた。


 身体の自由が利かなくなり、マネキンのように草原に伏せる。


「……ス、狙撃手スナイパー……」


 真っ赤に染まり、暗転してく視界の端に、小さな人影が見えた。


 市街地を背に狙撃銃スナイパーライフルを携えた男が、こちらを向いて立っている。


 いつからそこにいたのか。偶然通りがかったのか。


 いや、出会った訳などどうでもいい。出会ったが最後であり、始まりなのだ。卑怯も何も、ありはしない。



 ここは何でもありの戦場。生き残りたければ勝ち続けろ。そういう場所、なの、だ、から……。



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