軽やかにして深く、神様と人をめぐる物語

まるで童話を読んでいるような軽やかな読み心地ですが、ストーリーに深みを感じます。

まだ神々と人間との間に交流があった時代、とある美貌の女神がその高慢さに人間界に落とされてしまいます。
なんだか「ちんちくりん」な姿になってしまった彼女、人間界で誰かに愛されることが天界への帰還の条件です。
右も左もわからぬ状態であった彼女ですが、テオという少年と巡り合い、人と触れ合いながらたくましく生活していきます。
しかし人間の生活は神様時代には気付かない大変な事ばかりで……

という感じで始まるのですが、もうとにかく読んでいて楽しいんです。
この女神「ファニ」がなかなか生意気なんですが、天然で鋭いところもあり、不思議とみんなに愛さているし、と、彼女の行動にとにかく目が離せないんです。
さらに彼女を取り巻くテオをはじめとしたキャラクターたちのなんと愛おしいこと。
貧しさの中にありながらも希望をもち、まっすぐに生きています。
彼らの生き生きしているさまが、この物語の大きな魅力の一つなんです。

なんというか「ヒトってこうだよなぁ」と思わせるところがあるんです。
このあたりがタイトルにも書いた深みだとおもうのですが、それをさりげなく感じさせるところがすごくいいです。

物語は子供も楽しめそうな童話のように進んでいきますが、やがて戦争の気配が漂ったり、人間と神々との関係性が描かれていきます。
この辺りはまた大人ならではの楽しみ方が出来るところだと思います。
戦争とは? カミサマとは? なんていろいろ考えさせられるというか。

とにかく読みやすくてコミカルな語り口、冒頭に仕掛けられている楽しい仕掛け!
徐々にストーリーが盛り上がっていく構成の巧みさ。
コメディの軽やかさの根底に滲ませた、人生の苦み。

それらをひっくるめて、子供でも読める物語に仕立て上げているのが素晴らしい!
そう言う物語ってなかなかないし、書くのは本当に難しいと思います。

だからこそ、おすすめです。

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