地上は神々の関与がある箱庭、もしくは舞台。
そんな風に感じられる世界で、一人の女神が愛される試練を与えられます。
女神は、愛されるためにはどうすれば良いか考え行動します。
神だから判らないことを訊き、身近で観察し、そして考えるのです。
これは人間の男女であっても同じ事。
人は他人のことは判らない。判らないから相手をしっかりと見て、知って、理解しようとする。
小さな事を積み重ね、相手との距離を縮めていく。
そうした人の営みの先にあるのは、共感、もしくは反発。
共感しうる相手との先にあるのは、愛されることかもしれない、愛することかもしれない。
何が得られるか判らないが、少しずつ積み重ねて必要なモノを女神は手に入れます。
その結果、与えられた試練は果たされ元の女神に戻ることを許される。
女神を含めて登場人物が愛らしいとか、人らしい魅力を持っているとか、そういった面もこの作品の魅力です。
ですが私は、神も人も苦悩しつつ一歩ずつ未来へ向けて進んでいく点がこの作品の魅力であり、とても好きなところです。
まだ一度完走しただけですが、必ずまたこの作品に触れたいと思うでしょう。
今からそう予感する作品に出会えてとても幸せです。
まるで童話を読んでいるような軽やかな読み心地ですが、ストーリーに深みを感じます。
まだ神々と人間との間に交流があった時代、とある美貌の女神がその高慢さに人間界に落とされてしまいます。
なんだか「ちんちくりん」な姿になってしまった彼女、人間界で誰かに愛されることが天界への帰還の条件です。
右も左もわからぬ状態であった彼女ですが、テオという少年と巡り合い、人と触れ合いながらたくましく生活していきます。
しかし人間の生活は神様時代には気付かない大変な事ばかりで……
という感じで始まるのですが、もうとにかく読んでいて楽しいんです。
この女神「ファニ」がなかなか生意気なんですが、天然で鋭いところもあり、不思議とみんなに愛さているし、と、彼女の行動にとにかく目が離せないんです。
さらに彼女を取り巻くテオをはじめとしたキャラクターたちのなんと愛おしいこと。
貧しさの中にありながらも希望をもち、まっすぐに生きています。
彼らの生き生きしているさまが、この物語の大きな魅力の一つなんです。
なんというか「ヒトってこうだよなぁ」と思わせるところがあるんです。
このあたりがタイトルにも書いた深みだとおもうのですが、それをさりげなく感じさせるところがすごくいいです。
物語は子供も楽しめそうな童話のように進んでいきますが、やがて戦争の気配が漂ったり、人間と神々との関係性が描かれていきます。
この辺りはまた大人ならではの楽しみ方が出来るところだと思います。
戦争とは? カミサマとは? なんていろいろ考えさせられるというか。
とにかく読みやすくてコミカルな語り口、冒頭に仕掛けられている楽しい仕掛け!
徐々にストーリーが盛り上がっていく構成の巧みさ。
コメディの軽やかさの根底に滲ませた、人生の苦み。
それらをひっくるめて、子供でも読める物語に仕立て上げているのが素晴らしい!
そう言う物語ってなかなかないし、書くのは本当に難しいと思います。
だからこそ、おすすめです。
父神様に地上へ落されでちんちくりんな姿になった高慢な女神さま。
そんな女神さまが自分を愛する人を探すストーリー。
もの凄く簡単に言えばね。
元から情景描写に定評のある作者様。
構成も展開、細かな描写、表現方法、読み手を物語の中に引き込む手立ては見事としか言いようがない。
だからこそ、その読みやすさに胡坐をかいてはいけない。
この物語は、深く読めば読むほど楽しめる。
国語の教科書にのせてもいい話だと、私は思っている。
さぁさぁ、ご覧あれ。
ちんちくりんでぺったんこで高慢な女神さまは、愛されるでしょうか?
ちんちくりんでぺったんこで高慢な女神さまは、愛せるでしょうか?
人々の営みを天上から見守ってらっしゃるうるわしの女神様。
けれども、この女神様。少しばかり高慢で、父神様に地上へ落されてしまい……?
地上に落とされ、うるわしのお姿からちんちくりんな幼女になった女神様の活躍が描かれる本作。
舞台となっているのは古代ギリシアのアテネと思われますが、具体的な名前は出てこず、まるでおとぎ話のような雰囲気に彩られています。
固有名詞は出てこずとも、作者様の知識の深さが十分にうかがえる描写は素敵の一言。
女神様が誰と出逢い、どんな経験をし、どう変わってゆくのか。
どうぞご自身の目でお確かめください(*´▽`*)
天界から、地上の様子を見守る女神様。しかしこの女神様、内面にちょーっと難アリな方でした。性格が悪くて高慢ちきと言う、女神様なんて肩書きからは大きく外れた方でした。
そんな彼女の行いに、とうとう父神様がお怒り、哀れ女神様は地上へと落とされてしいましたわ。しかも、ちんちくりんな子供の姿になると言うハンデつきで。
元に戻る条件は、人間の男性に心から好かれること。
ここから、女神様が天界に戻るための奮闘が始まると書きたい所なのですが、そうそう上手くはいきません。
美しかった姿を失った女神様は、好かれるどころか、みんな口を開けばかける言葉はちんちくりん。
そう、「ちんちくりん」。いったいこの話の中で、彼女は何度そう呼ばれた事でしょう。読んでいて、一生分の「ちんちくりん」を目にしたかもしれません。
ですが怒ることはあっても、決してへこたれないのがこの女神様の良いところ。そして多少切ない展開があっても、なぜかクスリと笑って仕舞うのもまた、女神様のお力なのかもしれません。
そうしていくうちに女神様は、いつの間にかたくさんの人達と出会い、これまで知らなかった事を経験していきます。
その果てに、彼女は人の愛を受け取る事ができるのでしょうか? それとも、彼女自身が愛が何なのかを知るのでしょうか?
見る者全てを魅了するその人は、天界に住む女神様。彼女は大層な美貌の持ち主だったのですが、残念なことに……性格が悪かったのです。
高慢で、人を愛することを知らない女神様。しかし、そんな彼女に文字通り天罰が。女神様の高慢さを見かねた大神様が、彼女を地上へと追放してしまったのです。しかも地上に落ちた女神様は……美貌とはかけ離れた、ちんちくりんな幼女の姿へとなってしまったのです。
幼女になってしまった女神様の、地上でのドタバタ生活の始まりです。
もし女神様のことを好きになってくれる人が現れたら、天界に帰してもらえるそうですけど。今のちんちくりんな姿では、好きになる人なんてそうそう見つかりません。
「やい、おまえ。わらわのことが好きであろう」
「そこのおまえ。わらわを好きと言え」
女神様、そうやって探そうなんて無茶です!
だけど地上で生活して、懸命に生きる人や、誰かを強く愛する人達とふれあっていけば、女神様もきっと変われる……かも?
これは地上に降りた女神様が、真実の愛を探すための物語…………本当ですよ。ギャグ展開もありますけど、この女神様、キメる時はキメるのですから。