愛する者のいない世界に、生きる価値はあるか?

〈運命の一枝〉シリーズ
今回の主人公は理仁(りひと)、額に大型の朱い「胞珠」を持ち、他人を意のままに操る「号令(コマンド)」の異能を持っている。この世界では、人々は産まれながら「胞珠」を体に埋めて産まれて来るのだ。胞珠が破砕すると、そこは「ダンジョン」となる。
理仁は、最愛の姉を喪い、留学先のフランスから帰国した。支配的な父に対抗し、姉を殺した敵に復讐するためにーー。


シリーズを通して拝読しているので、世界設定にも登場人物たちの性格にも馴染んできたのですが……今作の前半は、辛かったです。理仁君の一人称が軽薄で投げ槍なだけに、さらに痛々しく感じました。仲間たちも辛い……文徳君も、鈴蘭ちゃんも、総統まで。だから、後半、新たな世界で再び彼らが集まったときには、ほっとしました。
二枝の世界の戦いとその結末を読み終え、これは理仁君の心の闘いでもあったのだと感じました。
人生はやり直しができませんが、望む枝を手にするためには、闘わなければなりませんね……。