転校生の彼女は私のことを○○と言った。

ななほしとろろ

 彼女は病室にいた。


 彼女に意識はなく、酸素マスクを着け横たわっている。


 父は丸椅子に腰掛け彼女の手を握る。


 見守る医者と看護師。その後ろには親戚の姿。


 心電図の音だけが静かに響く。


 酸素マスクが呼吸によって曇る。


 この二つが彼女はまだ生きていると告げる唯一の証。


 窓際には花瓶。一輪の花が活けられている。


 その横には、丁寧に畳まれた一枚のハンカチと小さな額に入った写真。


 写真には一人の女性が写っている。歳は二十代半ばくらいだろうか。


 父は写真を見ながらつぶやく。


「どうかこの子を……救ってくれ」


 しかし無情にも医者は言った。


 彼女がもし目覚めなければ……今夜が山でしょう。と。

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