3
校舎二階に着いた二人は、階段前の大きな掲示板と睨めっこをしている。
他の生徒もみな同じく鋭い眼差しで掲示板を見る。
周りでは歓喜の声や残念がっている声が飛び交う。
穂乃花は卓哉に訊く。
「あった?」
「いいや、まだ見つけてない」
「ちゃんと探してる? AとBには無い」
「んー、Dにはねーな」
その掲示板はクラス替えの生徒名簿である。AからDまでの四クラス分の名簿。
毎年の楽しみでもあり恐怖でもある。
「ってことはさ?」
「ああ」
二人の表情は喜びに変わる。
「Cだ」
「Cだな」
穂乃花は思わず卓哉に抱き着いた。
「おい」
卓哉のその声で穂乃花はすぐに離れる。
「ご、ごめん!」
穂乃花は下を向き顔を赤らめた。
鞄を両手で下げながらくるりと回りC組の教室へ向かう。
狭い歩幅で卓哉を待つかのように進む。
卓哉は肩から鞄を下げ左手をポケットに入れながら後を追う。
この時穂乃花は飛び跳ねたいほど嬉しかった。
去年は違うクラスだった卓哉。
穂乃花は恋をしていた。卓哉と友達にになってからずっと。
今年こそは告白する。そう心に秘めている。
「早くしないと置いてくぞー! 卓哉ー」
「お、おい」
その声で卓哉は少し歩幅を広げた。
教室に入り新たな席で朝のホームルームを待つ。
出席番号順に決められた席。
卓哉は廊下側の列後ろから二番目。穂乃花はその隣の列一番後ろ。卓哉の左後ろの席である。
穂乃花は席も近いと喜ぶ。
しかし、一つふと気になることもあった。
穂乃花の右隣りの席に生徒がいないのだ。
それ以外の席は皆着席し、落ち着きがないながらも担任が来てホームルームが始まるのを待っている。
すでに八時半を過ぎ、遅刻となる時間。
そんな穂乃花をよそに教室の扉ががらりと開き先生が入ってくる。
「お。皆きちんと席についているな。今年の二年は優等生揃いか?」
先生はそう言いながら教壇に立った。
「私はC組担任の
と、黒板に名前を書きながら挨拶をした。
「それと転校生を紹介する」
この一言で教室内が騒がしくなる。
そして穂乃花は気づいた。
転校生は絶対私の隣の席だ。と。
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