8
祭りの日。
意外にも花は穂乃花の誘いに二つ返事で了承した。
穂乃花は来てくれるかどうかが不安であったが、余計な心配だったようだ。
あの日何故バスに乗らなかったのかは分からないままではあったが……。
三人の待ち合わせ場所は並木道にあるいつものコンビニ。
並木道を高校とは反対に進むと神社がある。
そこに屋台が並ぶ。この町では一番大きな祭りであり、隣町からも大勢人がやってくる。
穂乃花は浴衣に身を包み二人を待つ。
すぐに卓哉はやってきた。
「わり。待ったか?」
「ううん。今来たとこ」
「花は?」
「ちょうど来たみたい」
セーラー服の花が二人の前にやってくる。
「花ちゃん。なんで制服なの?」
穂乃花は驚きの表情を隠せない。
「学生手帳に書いてあったから。外出時は制服着用って」
「んもー! 真面目過ぎー花ちゃんは!」
そんなやり取りを笑いながら見つめる卓哉。
他愛もない穂乃花の話を二人は聞きながら出店の方へと向かう。
境内に着くと溢れんばかりの人で賑わっている。
そんな中、少し先を歩く穂乃花の袖を花は引いた。
卓哉も気付き足を止める。
「どうしたの? 花ちゃん」
花は袖を掴んだま離さない。
少しの沈黙の後口を開く。
「お願いがあるの」
穂乃花と卓哉は見合わせる。
「お願い? 何?」
「あのね。……手を繋いでほしい」
穂乃花は笑顔で花の左手を握る。
それを見た卓哉はまた前を向き歩みを進めようとした。
「た……たくやも。こっちの手繋いで欲しい」
花は右手を差し出した。
卓哉は困惑した様子で穂乃花を見た。
穂乃花も戸惑いの表情を浮かべたが、卓哉に目で合図をする。
卓哉は照れくさそうにしながらも花の手を取った。
すると、花は今まで見たことがない顔でほほ笑んだ。
周りから見ると一風変わった三人は、思い思いに出店を楽しんだ。
穂乃花は花にお面を買ってあげたり。
卓哉は金魚すくいで取った金魚を花にあげたり。
三人で一つのたこ焼きを食べたり。
花はくじで引いたカエルのおもちゃを卓哉にあげたり。
買ったばかりのリンゴ飴を落としてしまった穂乃花の頭を花が撫でたり。
三人は祭りを楽しんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます