EP5 懐かしの再会

「煌兄さん!こっちこっち!」

「ちょっ!?待て、なごみぃ!」

「早く早く!」

「こんなに荷物持たせておいて…早くできるわけないでしょ!」

「あぁ…そっか。ごめんごめん」

ここは俺の住んでるとこから一番近くて、一番大きいショッピングセンター。

さて。ちょっと状況を整理しよう。


あれは数時間前――


「♪♪〜」

妙に上機嫌だった俺は鼻歌しながら帰っていた。

ふと前を見ると、女子中学生の4人組が歩いていた。

まぁそんなのどうでもいいと思った―


「ねぇねぇ、和ってさー好きな人いんの?」

「えっ…わ、私?私は…煌兄さんのことが好きだよ」

「兄さん?そういえば和って兄弟いたよね〜」

「う、うん…でも、今は別々に暮らしてるから…どうしてるか…」

「そっか〜」


なんか…聞いてはいけないことを聞いてしまった気がする…

な、和…?久しぶりに聞いたな、その名前。

煌兄さん…昔なーんかそんなふうに言われたなぁ…

すれ違うときに、たまたま目があった。

「えっ……?兄さん…?」

俺はビクッとして…恐る恐る後ろを見た。

そこには…

めっちゃ目を輝かせている和と。

「へぇ〜この人が和のお兄さんかぁ〜」という感じで見ている残り3人。

「や、やぁ…和。元気にしてた?」

「?元気だよ?兄さん」

「そ、そうかーじゃあ俺は用事があるから帰るねー」

「兄さん。」

「はい。なんでしょう。」

に向かって敬語になってしまった。

「メアド…」

「へっ…?」

「メアド交換して!」

「いいよ」

「あと、早速だけど。このあとちょっと付き合ってくれる?」

「えっ…でも…俺…用事が…」

「兄さん。はやめてください?」

「うっ…」

「じゃあ、まったね〜♪」

「おう…」

そうして和と別れた。

別れてから家に着くまで俺は何回ため息をついたのだろうか。


★★★★★★★★


「ただいま…」

さっきまでのテンションはどこへ行ったのか。

今はテンションだだ下がりである。

「あ、煌兄…お帰り。」

と海音が出迎えてくれた。

「ただいま。海音…。」

と俺は弱々しい声で返した。

海音は首をかしげて―

「どうしたの?煌兄。いつもの元気は?」

と心配された。

俺はたちまち涙目になって―

「うわぁぁぁんかのぉぉぉぉんんんんん」

と泣いて抱きついたのであった。

「に、にぃっ…!?」

「たすけてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

「ど、どうしたのっ…?に、にぃ…?」

「それが…それがぁぁぁ―」

和のことを話そうと思った瞬間、玄関の鍵が開いた。

「「え?」」

2人とも声を合わせて首をかしげた。

いろいろ考えて我に返った瞬間―

「あらあら兄さん。兄さんもついにシスコンにでもなったのですか?」

とケラケラ笑いながら入ってきた和。

「なんで…鍵…持ってるんだよ…!?」

「えー?そりゃー持ってるよ。年の為に…ね♪」

と。隣でチッと舌打ちをした海音。

「おや。久しぶりね。

「元気そうだね。

「あれぇ〜?はどこへ行ったのかな〜?」

なごみをお姉ちゃんと呼ぶ必要…ない。」

「まぁ!なんと生意気になったのかしら!」

と俺を睨んで―――

「これもぜーんぶ兄さんのせい?」

「煌兄に…手出したら…許さない…」

「怖いよ〜海音〜手は出さないから、安心して?」

「……………」

なんだろ…この空気。この雰囲気。

怖い…。

「さて。兄さん。行きましょ?」

「へ?」

「なに間抜けな声出してるんですか。このあとちょっと付き合ってくれるって言ったでしょ?」

「え?あぁ…そうだったねー」

「まさか…忘れてた…?」

「………。」

「そんなっ…ひどい…!せっかく迎えに来てあげたのにっ…!」

「えっ!?」

と声を出したのは海音だった。

「にぃ……あれと一緒に行かないで…」

お、おぉ…ついに…モノ扱いになったか…

「え…いや…でも…」

「支度してください!兄さん!行きますよ!そんなものと一緒にいたら、兄さんまでヒキコモリになりますよ!?」

2人とも…モノ扱いなんだ…。

変わらないな。昔から。

海音と和は、最高に仲が悪い。

「にぃ……!」

口調が変わった海音。

「兄さん?行きましょ?」

行くよね?という威圧をかけてくる和。

結論。二人共怖い。

「ごめん…海音…。今回だけ許してくれ。」

「にっ…にぃっ…」

と泣きそうになる。

「えっ!ちょっ、海音!?泣くなよ!?」

そして俺に近づき―

耳元で。

「あとでギュッとしてくれたら―許すよ?」

と。目を赤くして言ってきた。

「嗚呼。わかったよ。海音。」

「やったっ!」

と立ち直り――

「じゃあ、にぃ。楽しんできてね!」

「ありがとー!じゃ、行ってくるね」

「行ってらっしゃい♪」


とまぁ。こんなハプニングがあって―

現在に至る。


「買いすぎだぞ!?」

「え?そう?」

手には持ちきれないほどの荷物があるのに。

これがまだ買い過ぎじゃない―だと!?

どんだけ爆買いするんですか。

時間にして現在午後6:30ジャスト。

まだ買い物を続けるのかと聞こうと思ったら―

「そろそろ帰りますか。兄さん。」

「えっ…?」

と思わず声が出た。

「荷物も大変そうですし。時間もあれなので。帰りましょうか。」

「お、おう。」

珍しいな。自分から帰るなんて言うのは。

成長…したのか。兄さん…嬉しいぞ。

「それじゃあ、私こっちなので。またメールしますね?兄さん♪」

「お、おう。じゃあな。」

「あ、待ってください兄さん!」

「ん〜?どした〜?」

「これ皆さんに渡しておいてください。」

渡してきたのはお菓子だ。

おいしそう。

「さんきゅーな、和。」

「いえいえ♪」

「それじゃ。」

「ばいばーい!兄さん!」


その後―――――

「ただいま〜」

「あ、にぃ…おかえり。さぁ、約束してたこと。やって?」

「あ…」

正直に言おう。

忘れてました。

「わかったよ。」

と言って、海音をギュッと抱きしめた。

「これでいいか?」

「うん♪いいよ」

海音…上機嫌だなぁ。

まるで午前中の俺みたいに…。

「これ、お土産。お菓子。みんなで食べよ。」

「やった〜」

と言ったそのとき―

「「ただいま〜」」

と夕姉と時雨が帰ってきた。

「あ、夕姉、時雨、おかえり。お菓子買ってきたから、みんなで食べよ?」

「ほんと?わーい!煌くんだーいすき!!」

と夕姉が右腕に抱きついてくる。

俺は勢い余って、転んだ。

「あ!お姉ちゃんずるい!私だって!お兄ちゃんだーいすき!」

と今度は時雨が左腕に抱きついてくる。

「…………にぃ……」

「かっ、海音!た、助けて…ヘルプ!」

「ずーっと好きだよ…にぃ♡」

と海音が俺の胸板にそっと乗ってきた。

「ちょっ!?三人共!?」


そうして、俺にとって良くも悪くもない日になった。

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