EP6 夏休み、海音との約束

「あー暑いーー」

夏だ。

外ではミーンミンミンと蝉の声。

あぁ…夏は憂鬱。


俺の学校では明日から夏休みだ。

楽園が待っている…!!!


「おーい、かのーん!」

「なに?煌兄。あと…」

「うん?」

「やっぱなんでもない」

とクスクス笑う海音。

「明日から夏休みだが…いつ行く?」

「なんなら明日からでも全然おっけー」

「あ、まじで!?じゃ、明日行くか!」

「やった〜行こー!」

「じいちゃんに電話入れとく。」

「準備してくるるん♪」

くっ…くる…くるる…ん!?!?

海音…

かわいいなあ!

ていうか…妹を可愛い可愛い言ってる俺って…

まさか!?シスコン!?

いやいやいや…海音、時雨、夕姉みたいにブラコンじゃああるまいし。

くそ…!!

とかなんか考えてた。

さて。電話を入れよう。さっきのことは忘れよう。いや、忘れた。


☏☏☏☏☏☏☏☏☏


「あ、もしもし?じいちゃん?」


『おぉ!煌姫!いつ行くことになった!?』


じいちゃん。相変わらずのハイテンション。あんた…何歳だよ…。


「明日からだけど…大丈夫?」


『おう!全然問題ないぜよ!』


いちいちツッコミ入れたくなるような喋り方だ。


「じゃ、よろしく〜」


『おう!待ってるよ〜〜〜ん』


………。もう…ツッコミ入れなくていいや…。


■■■■■■■■


「海音。電話入れといたぞ」

「ありがと〜♪」

海音に報告、あとは…あの二人夕姉と時雨が納得してくれるかどうか。

あの二人のことだ。

どうせ―

「えぇぇぇ!お兄ちゃん、しばらくいなくなっちゃうの!?そんなのいや!」

とか―

「うええええええん」

とか言って…泣きそうだな。


リビングのドアの前で深呼吸、ため息一発、カッと目を見開いて―

「頼もう!」

と入ってしまった。なんだよ…頼もうて…w 腹痛い。

当然二人はびっくりしていて、何事!?みたいな目で見ていた。

「あ、ごめん…。明日からのことなんだけどさ。」

「「???」」

二人共同時に首をかしげる。

「その…海音と一緒にじいちゃんのとこへ行くんだ。」

「うんうん。」

あれ?妙に納得してるぞ。この二人。

「しばらく家にいないんだけど…大丈夫か?」

二人共少し考えて、二人でアイコンタクト、同時にうなずいて―

「いいよ。楽しんできてね。お兄ちゃん。あと―海音。」

「煌くんがいなくなるの悲しいけど…まぁ、任せて!」

なんだよ二人共。泣けるじゃあねえか。

「ありがと。時雨、夕姉。」

「楽しんできてね!煌くん!あと―海音もね。」

「た、楽しんでくる!」

「楽しんでくるよ。」

「もう夜遅いし、もう寝たら?始発に乗るんでしょ?」

「あ、あぁ。そうだな。じゃあ寝るわ。おやすみ。」

「おやすみ…」

やっぱり普通に話すのが慣れないのか、ちょっと不安げな海音。

2階に上がって―

「じゃ、海音。明日朝5時出発な。おやすみ。」

「ん。わかった。おやすみ、煌兄。」


■■■■■■■■■■


―翌日―

「…っ!?」

俺は朝から驚いた。

海音の髪型が違う。

いつもおろしていた髪の毛が、今日はポニーテールになっている。

俺は少し見惚れていた―

か、かわいい…。

ジッと海音を見ていると

「に、にぃ…?」

「あ、ごっ、ごめん!出れるか?」

「ん。準備万端、いつでもおっけー…!」

そして玄関の開けて―

「「行ってきます!!」」

と家を出た。


俺の住んでいる季奈崎きなさき市から、

じいちゃんの住んでいる、火海山ひみやま市まで

電車とバスを使って、約5時間。最寄りのバス停から旅館まで

徒歩30分。遠い。


=========


季奈崎駅に着いた。

切符も買った。

切符には、《季奈崎→火海山》と書かれている。

「ホームに入るか。」

「ん。」

と言って、二人共ホームに入った。

「ええと…………。」

俺は何を迷っているんだ!と思いながら電光掲示板を見た。

―5:23発 特急 夜々祇ややぎ行―

今の時間は5:15分。

「海音。ちょっと時間あるから、座ってよ」

「わかった。」

そう言って、近くにあった椅子に座った。

「なんか…煌兄とこうやって一緒に旅行するの…初めてだよね。」

「そうだな〜。昔はよく4人で行ってたっけ。俺と海音と和と母さんで。」

「そ、そうだね…。ママ…元気かな。」

「元気にしてるだろ。」

母は現在―

海外出張中。しかも帰ってくるのは約2年後。

と―――――

『お待たせしました―まもなく1番線に特急夜々祇行が12両で参ります。危険ですので、黄色い線の内側に下がってお待ちください。』

と同時にピピピッと鳴って―

電車がきた。

「終点まで時間あるし、寝てもいいぞ。起こしてやるから。」

「そう?じゃあ遠慮なく。」

と言いながら、適当に二人がけの席に座って―

早速寝た。

「終点まであと2時間かぁ…。」

そうボソッとつぶやき、俺は本を読むことにした。


■■■■■■■■■■


―約2時間後―


まぁ、なんていうか。到着するから起こしたいのに、起こしたくない。

………………。

いつの間に膝で寝てるんですかね。海音よ。

寝顔可愛い――――――

『まもなく〜終点、夜々祇〜お出口は左側、2番線に到着しまーす』

そのアナウンスで我に返り―

「海音。もう着いたぞ。海音。」

海音は目をパチッと開けて―

「わかった。ていうか…この体制…恥ずかしい…」

おお…!顔を赤くしてる海音、可愛い…!

「さ、行くか。」

「おー」

と言って、特急列車をあとにした。


=========

「さて。次に乗る電車は…」

「にぃ…こっち」

「え?お、おう」

3歳下の妹に誘導される兄16歳。

「あ、ここか!」

「そ」

「ありがとな!海音。」

と海音の頭を撫でた。

海音は照れくさそうにしている。

「ちょっと切符買ってくる。待ってて。」

「わかった。」

そう言って柱の近くに立った。

「ええと…火海山…火海山…あっ、これか!」

ピッと押して切符が2枚出てきた。

「さぁて戻るか――――ッ!?」

独り言をつぶやいて振り返った瞬間、海音が変な不良に絡まれていた。

海音は戸惑っていて、不良たちはニヤニヤしながら話しかけていた。

俺は海音の近くに行った。

俺に気付いたのか、不良たちの目線が俺の方にロックオンした。

でも俺はそんなの気にせずに、

「海音。行こうか。」

と低く冷たい声で言った。

海音はなにも言わずに、アイコンタクトで返した。

荷物を持って、改札に向かおうとした瞬間―

「おいゴラ、お前喧嘩売ってのか?あぁ?」

と不良が一番言ってそうなセリフを聞いた。

「はい?」

と返した。

不良たちは苛ついたのか―

「いい加減にしろよ!ああっ!?」

怒鳴った。

ここどこかわかってるのかな。

なんだけど。

当然喧嘩になれば、周りの人たちの目線が不良と俺に向けられる。

「海音。これ切符。ここから先はわかるだろ?」

軽く頷く海音。

「先に行っててくれ。俺が来るより先に電車が来たら、それに乗れ。」

海音は驚いてしばらく躊躇して―

不安そうな顔で頷いた。

海音は切符を受け取ると、逃げるようにしてホームに向かっていった。

不良たちは舌打ちしてこっちを見た。

「あのさ。普通連れがいたら引くべきだと思うんだけど、違うかい?」

「んなもん関係ねぇよ」

「いいや?関係あるさ。」

「あぁ?関係ねぇってんだろ!」

嗚呼。この不良たち、バカで助かった。

ここで「じゃあなにに関係するんだよ」って言われてたら終わってた。

あぶねー

「関係ある」

「関係ねぇ」

「ある」

「ねぇ」

そして俺は挑発。

嘲笑って―

「ある」

と言った。

不良たちはそれを見て怒りが最高潮に達したのか―

殴りかかってきた。

俺は幸い、小学生のときに空手を習ってたから、1人2人のパンチなど簡単に受け流すことができる。

そう。1人2人ならの話。

「おい!お前ら!」

と言った瞬間―

周りからゾロゾロ仲間が出てきた。

「おいおい10人いんのかよ…」

呆れた声で言った。

「お前ら、殺れえええええええ」

と駅の中に声が響いた。

その言葉と同時に、一気に俺に襲いかかってきた。

俺はパンチを受け流し、止めることに集中しすぎて周りが見えなくなり―

横に回り込んでいた1人に気づかず―

思いっきり顔にパンチをくらった。

勢いがあったのか、俺は少しふらついた。

そこにすかさず腹パン。顔が痛い。腹が痛い。

口の中で血の味がする。

遠くでパトカーの音が聞こえる。

ん?パトカー?誰が通報したんだ…?

そう思ったとこから俺の意識がなくなった。


========


気がつくとベッドの上で寝ていた。

体を起こすと、妙に体が痛い。

俺は内心舌打ちをした。

そこに―

「あぁ、目が覚めたかい?」

と一人の警察官が入ってきた。

「大丈夫かい?」

「はい。体が痛いですが…」

「そうか。はどこへ行く途中だったのかな?」

「じいちゃんが経営している…火海山市の旅館に…」

ん?なんでこの人俺の名前を…?

「えと…あの…なんで俺の名前を…?」

すると―

「あぁ。私の自己紹介がまだだったね。私は虹ノにじのみやと言います。気軽に虹ノ都と呼んでくれ。で―君の名前のことだけど。」

虹ノ都さんは何かを思い出して軽く笑った。

「相当兄思いなんだね。君の妹さん。一番最初に通報してくれたのは、君の妹さんだ。」

海音が………?

ん?海音…?

「あっ…俺…行かないと…」

そう言うと虹ノ都さんは

「幸い、君はどこも怪我をしてない。腕に何箇所かアザがあって、頬に掠り傷だ。行っても大丈夫だろう。」

そう言ってくれた。

―――――――――――

そして病院を出たとき、虹ノ都さんが声をかけてくれた。

「駅まで行きたいんだろう?送ってくよ。」

「いいんですか!!??」

「あぁ。」

即座に反応した。

だって―――

ここ、夜々祇ややぎ市でしょ?

俺、季奈崎きなさき市と火海山市にしか行ったことないもん。

ここが病院、ということ以外、なにもわからない。

だから、駅まで送ってくれるというのはとてもありがたいことだ。

「ありがとうございます!」

そう言って、俺は虹ノ都さんの車に乗った。

ふと―時間が気になり、時計を見た。

午後2時45分。

確か―3時ジャストに火海山行があったっけ。

そう思って、切符を探した。

しかし―――

「あ、あれ?な、ない…」

「ん?どうした?」

「その…切符が…」

「あぁ。切符なら、ボロボロになってたから使えなくなってる。新しいの買ってやるよ」

どこまで親切なんだこのお方。

そして病院から約10分、駅についた。

「ほい。これ火海山行の切符。気をつけてな。」

「ありがとうございます!」

そして軽く一礼してホームに向かった。


===


『まもなく4番線に快速 火海山行が参ります。』

丁度いいタイミングだ。

海音が乗ったのは、の火海山行。

俺が今から乗るのはの火海山行。

普通列車で約2時間。

停車駅も少ない快速なら―――?

1時間30分ぐらいだろう。

「ふぅ…親切な方で助かった…。」


==========


『まもなく終点、火海山〜。お出口は右側、0番ホームに到着しま〜す』

そういえば火海山駅って0番ホームあったな。

そろそろ海音、着いてるかな。

「よし!あとはバスだ!」

そう言って駅を出た。

周りを見渡す。

出たのはいいけどバスが一台も来てない。

俺は時刻表を見に、旅館方面行のバス停に行った。

「えーと…今16時34分…次のバスが…16時52分…」

嗚呼。代償が来た。

約20分待ち。

特にしたいこともないので、椅子に座った。


「ハァァァァァァックション!!」


豪快なくしゃみをしてしまった。恥ずかしい。

誰か俺の話でもしているな!?

そう考えたのであった。


一方その頃、妹の海音は…


「にぃ…大丈夫かな…」

「大丈夫じゃよ。あいつなら。」

懐かしい声。懐かしい口調。

海音は無事に旅館に着いたのだ。

そして、今日起こったことを全部話した。

「夜までにはくるじゃろ」

と。

海音はその言葉を信じて、旅館で待っている。



バスが来た。

「さて、1時間乗れば…楽園パラダイスが…」

そう言って、バスに乗り込んだ。

だいぶ疲れていたので、寝てしまった。


「お客様、終点ですよ。お客様!」

「んぁ…ふぁっ!?終点!?」

いきなり大声を出してしまったので、運転手が驚いていた。

「あ、すみません…」

「いえいえ。それより…お客様はどちらに行かれる予定だったのですか?」

「あ、旅館です」

「そうでございますか。よかったです。万が一、乗り過ごしていたら…と思いまして…。」

「そ、そうですか…心配かけて、申し訳ないです。」

俺はお金を払って、バスを降りた。

あとは歩くだけ!

さぁーがんばろ――


「疲れた。」


歩き始めて5分。忘れていた。

俺は運動もなにもしてないから…

もうバテてしまった…

幸い、周りは木に囲まれているので太陽の光はほとんど遮っている。

涼しい。でも暗い。

あーそっか…もう夕方だもんね。


「ちょっと休憩…」


歩き始めて10分。

体力の限界…。

これ…海音が一緒にいたら、迷惑かけてたな…


「だめだだめだ!ネガティブに行ったら余計に疲れる!そうだ!歌を歌おう」

という謎の発想。

まぁ、歌いながら行ったら案外楽しい。

ただ…旅館に近づくたびに…山道になって…怖い。

熊が出てきそう…。

――――っ!だめだ!海音の兄、冷那月煌姫さなつきてるき、16歳!

怖がっていたら、兄として恥だ!

俺には…兄としてのプライドっちゅーもんがあるねん!

「うぉぉぉぉ!!!やる気出たぁぁぁぁ!!!!」

俺は…なんで叫んでるんだ??

まぁいいや。

突然のやる気スイッチONになって…

全力ダッシュ。


そして―そのおかげか。

「はぁはぁ…ナウタイム…午後6時18分…旅館が…見えてきた…」

あたりは暗く、空を見上げると、空がオレンジ色に染まっていた。

あともう少しというところで――

「にぃ…?」

と声が聞こえた。

この呼び方…この声…

「海音!?」

「にぃ!」

と旅館方面から降りてきた少女かのん

出迎えかぁ…お兄ちゃん、嬉しいぞ!

海音が走ってきた。

俺の近くに来ても止まる気配はなく―

抱きついた。

「えっ!ちょっ…海音!?」

「にぃ…大丈夫っ!?…ごめんなさい…私のせいで…」

声が掠れていた。泣いているのだろう。

「海音。海音のせいなんかじゃないさ。それに、俺は全然大丈夫だから。

問題ない!安心しろ、海音。」

俺は優しく声をかけた。

「うっ…うぇぇぇぇぇん…にっ…にぃっ…」

号泣。

俺…心配かけすぎたな…。反省。

「行くか?」

聞いても返事しない。泣いている。

そんな中―

「………おんぶ…」 

「へっ…?」

「…おんぶして…」

泣き顔で、顔赤くして…お願いごとか…

兄ちゃん、そんな顔されたら断れないっ!

「いいぞ。ほら、おいで」

そう言うと、海音は俺の背中に乗った。

「じゃあ、行くぞ。よいしょっと…」

俺はゆっくり歩き始めた。

しばらく歩いて―

「海音。じいちゃんなんか言ってたか?」

聞いても返事なし。

どうしたんだ?と思い、耳を澄ましたら―

「………ぅ…にぃ…」

なーんだ…。寝てるのか。安心したっぽいな。

よかった。


==


「………。入るのが怖い。」

着いたのはいいけど…背中に海音。手には荷物。

入りにくい…。

でも…勇気を振り絞って…!!!

一歩前へ歩き始めた瞬間―

「にぃ…?」

と寝起きの海音から。

「あぁ、海音。着いたぞ。」

「ん。」

そう言って、降りた。

入り口の前に立つと―


ウィーン―――――――


当然、自動ドアが開く。

すると―

「いらっしゃいませ!」

と声を揃えて言う従業員達。

「冷那月様ですね。」

「は、はい」

「こちら、18階のルームキーでございます。」

18階。高いな。

そう思いながら、受け取った。

「エレベーターはこちらになります。」

フロントを少し進んで右側にある。

それにしても…人気だな。

ホールにたくさんのお客さんいるし…

「冷那月様はフリーでございますので、好きなときにチェックアウトしていただいて結構です。」

おぉ!まじか。そんなんあるのか。嬉しいわー

「ありがとうございます!」

「では、ごゆっくり。」

「海音、行こうか。」

「ん。」

そして、エレベーターに乗った瞬間気づいた。

18階って…最上階じゃん!

ま、まさか…スイートルーム…

お、お金大丈夫かなぁ…

チンッとなって、エレベーターのドアが開く。


「おいおい…嘘だろ…」


あたりを見回すと…

そこには…

高級感あふれる部屋が4部屋。

「にぃ…これ…まじの…スイートルーム…?」

「っぽいね…。」

スイートルーム。一泊するだけでも高額なのに…

ここに何泊もしろと……?

俺は急いでじいちゃんに聞いてみた。


☏☏☏☏☏☏☏☏☏

「あ、もしもし、じいちゃん!?」


『おぉ、煌姫!無事か!?今どこじゃ!?』


「今18階にいる。」


『あぁ、ついたのか。よかった。』


「なんでスイートルームなんだよ。」


『可愛い孫のためじゃよ。わしの奢りじゃから、ゆっくりしてってぇなぁ』


俺は苦笑いして―

「ありがと…じいちゃんは今どこに?」


『別館』


「は?」


『隣にでっかい建物見えるじゃろ?』


「うん…」


『そこにおる。それじゃあ、わしは忙しいから切るぞー』


「え!?あ、ちょ―――」


☏☏☏☏☏☏☏☏☏


「はぁ…まったく…」

俺はため息をついて、外を見た。暗い。

夜だからね。

「温泉入ろ…海音、温泉行く――」

「行く!」

即答。


〜〜〜


浴槽内

「はぁぁぁぁ………癒やされるぅぅぅ」

喧嘩したからいろんなとこが痛い。

すると――

ガラッ―

「にぃ…背中流しに来た」

「ふぇっ!?海音!?なんで!?」

「ここ…家族風呂…」

確かに家族風呂とは書いてあったけども…

「とッ、ととととととととととりあえず俺上がるねッ!海音、ごゆっくり!」

「……………」


〜〜〜


「な、なんだったんだ……?]

どうも海音の様子がおかしい。

そんなことを考えながら部屋に向かった。



――――ガチャ

「お、おかえり海音」

「ただいま…にぃ…」

少し元気がない。

すると―

「にぃ…明日…海行きたい…」

「ん。おけおけ。行こうか。」

海。この旅館はとりあえずすごい。

旅館の周りは山に囲まれている。でも、最上階スイートルームのここならわかる。

そう。山の少し向こうに海があるのだ。

しかも、道まで整備してある。

だからこの旅館はすごくて、人気なのである。


「まぁ、今日はもう遅いし寝るか。」

「ん」

「おやすみ」

「おやすみ…」


海音…元気ないな…特に…から…。

そもそも、ここに来たいって言ったの海音だしなぁ…

もう少し元気出して楽しんでほしいなぁ…

俺と海音の約束…。


そんなことを思いながら俺は深い眠りについた。


いつもより長く感じた1日が終わった。

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