EP3 煌姫の学校生活

「行ってきます」

そう言うと―

「あれ?お兄ちゃん、もう行くの?」

と時雨。

「早すぎじゃない?私も一緒に行こうか?」

と心配する姉、夕夏。

「いや、大丈夫。二人共ありがとう」

「そぉ?じゃあ行ってらっしゃい!」

「気をつけてね?」

「わかってるって」

苦笑いしながら家を出た。


この道を一人で歩くのは…初めてかもしれない。


家から歩いて10分。家族の中で俺の通ってる学校は家から一番近い。

まぁ…それもそのはず。

俺は普通の学校なのだが…

姉の夕夏は隣町の成績が優秀な高校に。

妹の時雨は家から歩く&バスで約30分の女子中学校。

海音は…通っていない。


はやく海音をもとの生活に戻せたら…と思った。


学校に着いたが誰もいない。それもそのはず。

だって。ホームルームまであと1時間。

そんな早い時間に誰も来るわけない。

俺は本を読むことにした。


数十分後。


ガラガラガラガラ…と

入ってきたのは学級会長の五十倍いとべ みやび

「あら。冷那月くんおはよ〜早いね〜」

「おはようございます。かいちょ。」

なぜ俺はと呼ぶのか。

それは。

「ひゃぁっ!?」

「大丈夫ですか?かいちょ。」

「…ってて…だ、大丈夫だよ!ちょっとつまずいて倒れただけだよ!」

「ならよかったです。」


そう。会長は。ドジっ娘なのだ。

ルックスは男子の理想と言えるほど、最高。

超可愛い。

なのに…ここだけは…残念だなぁ…


●●●●●


ホームルームまであと5分になったとき。

俺の親友、十嘉すが幸栄こうえい

彼は、俺の家庭事情を唯一知っている、親友なのだ。

「あ、煌姫。おはよ」

「ん。おはよ〜」

自分の席に行って、カバンをおろして俺のところにきた。

「ねぇねぇ煌姫。」

「んー?どしたー?」

「休みの間、苦労しなかった?」

俺は少し驚いた。

「あぁ…ちょっとね…はは…」

「ところでさ。」

「うん?」

「煌姫は誰が一番好みなの?」

「はぁっ!?」

つまり…

夕夏、時雨、海音のうち、誰が一番好みか。

いやいやいやいやいやいやいやいや。

俺は自分の好みとか全然考えてなかった…。

………………。

「うーん…海音かな…。」

「へぇ〜以外だね。」

「なにが!?」

とっさにツッコミを入れた。

「いやー。お姉さんの方かと思ってた…。」

「あー…夕姉か」

「そそ。優しいし。結構美人さんだし。

 ていうかさ、煌姫の姉妹ってみんな美人だよね。」

「あぁ。まぁな。ありがとう。」

「いや、別に褒めてないけど…」

と―――


キーンコーンカーンコーン…と

チャイムが鳴った。


●●●●●


数時間後。

もうそろそろ帰る時間帯。

俺の携帯から、雨の音が聞こえた。

「あ。電話…?」

「ねぇ煌姫。なんで雨の音なの?」

「あ、ごめん。ちょっと電話してくる。」

「ほいほ〜い」



「もしもし?どうした?」

『あ、お兄ちゃん?今日さ、一緒に帰らない?』

「いいけど、どうすんの?」

『なにが?』

「だいぶ距離あるだろ?」

『大丈夫大丈夫。お兄ちゃん。?』

なんか…妹が威圧を…

「わかったよ。もう少しで学校終わるから。待ってろよ。」

『わーい!やったー!待ってるね!』



「親友よ。聞いてくれ。」

「どうした?」

「俺…今から妹を迎えに行かないと…」

「あぁ。つまり一人で女子中に行くと?」

「察しが良くて助かる…」

「煌姫。」

「なに?」

「頑張ってね。」

「……………………はい。」

「あ、あと着メロの話だけど。」

「あ、説明してなかったな。」

「うんうん。なんで雨の音?」

「それは、時雨だから。」

「んーと…つまり…時雨さんがかけたら、雨の音が…?」

「うん。そゆこと」

「なるなる。」

ちなみに。

夕夏がかけてきた場合。着メロの音は蝉の鳴き声。

海音がかけてきた場合は、波の音がするようになってる。

「それじゃ、帰るね。頑張って。」

「お、おう。じゃあな。」


―――――――――――――


俺は女子中の前に立っていた。

すれ違うそこの生徒からは、変な目で見られていた。

そんな中…

「あ、お兄ちゃん〜!」

「あ、時雨」

時雨がきた。んで。何をするかと思いきや…

「おそ〜〜〜い!!」

といきなり大きな声で叫んだ。

「うわっ!?」

「まったく…待たせ過ぎだよ。」

「ご、ごめんな。じゃ、帰ろっか。」

「ん」

一文字で返された…。

そのまま二人はほとんど話をせずに

家に帰った。



============================


××××年7月4日×曜日 天気 晴


なんだろう。いつもより疲れた。

今日は…時雨が攻撃的だった。

こんな日が毎日続くって考えたら…

ちょっと大変…だなぁ…。

普通の日常になりますように…。

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