EP2 冷那月家の事情

煌兄てるにぃ…」

「海音?どうかした?」

「私…煌兄と一緒にじいちゃんのとこ行きたい…」

「え…」

じいちゃんは田舎で旅館を経営している。

しかも人気が高い。

ただ…ここからだと電車で約4時間。

駅で降りたあと、バスに乗って約1時間。

とにかく、遠い。

「ダメ…?」

海音。目を潤ませながら俺を見ないで…。

兄ちゃん、そういうのすごく弱いから…。

「ダメ…なの…?にぃ…?」

今度は泣きそうな顔で言う。

「わかったよ…いつ行く?」

「夏休み」

「でしょうね。」

「あ、ごめん。俺もう学校行くわ。」

「わかった。行ってらっしゃい。」

「行ってきます。」

「じいちゃんに頼むか…」

俺はボソッとつぶやいた。


その日の夜。

俺はじいちゃんに電話をかけた。

「もしもし?じいちゃん?」

『おお!その声は煌姫か!久しぶりだな!どうした?』

なにやら興奮している感じだ。

「えーと…夏休みに旅館そっちに行っていい?泊まりたいんだけど…」

『ん?いいぞ。何人だ?』

「二人。」

『わかった。じゃ待ってるぞー!』

「あいあいさー」

じいちゃんとの電話が終わった。

「まったく…のんきなじいちゃんだなぁ…」

「どうかしたの?お兄ちゃん」

時雨が心配そうに聞いてきた。

「ああ。大丈夫。そろそろ眠るわ」

「わかった。おやすみなさい。」

「おやすみ。時雨。」

そう言って部屋を出たが、ふと思う。

「夕姉…どこ行った…?」

今日は日曜。学校なんてないはず。ましてや、今は夜。

「ま、そのうち帰ってくるか。」

そう思いながら、部屋に戻る。


「日記をつけるのも悪くないかな…」

自分の部屋で独り言を言った瞬間、

「煌兄?」

と布団の中から海音の声。

「うわああああああああああああ!?」

めっちゃビビった。

「かっ、海音!?なんでここに…」

「忍び込んでた。」

君は忍者かな?

まぁ…いい。

「じいちゃんに言っといたぞ。」

「ありがと。にぃ…」

そうして今日も1日が終わった。


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××××年7月2日×曜日 天気…晴


相変わらず、夕姉と海音は喧嘩している。

早く止めてあげたい。

早く海音を普通に戻してあげたい。

海音と夏休み中にじいちゃんの旅館へ

行くことになった。俺も行く。

明日は何が起きるのだろう。

またいつもの日常が来る。

あの子達は毎日俺にデレデレしてくる。

そんなので大丈夫なのか?

まぁ…個人的には嬉しいんだけど。

俺なんかでいいのかな。


デレデレな姉と妹達に困ってます。

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