絶妙な融合を見せる『ハードボイルド』×『サイバーパンク』。

この作品がエンタテインメント性に満ちているのは、何より『王道』である要素が、うまく掛け算されているからだと私は思う。
つまり、『ハードボイルド』×『サイバーパンク』だ。これを上手くギミックとして活かしている。最たるものが、主人公たる『ジャック』と、その相棒『キャス』のコンビだ。
キャスは電脳空間から彼をサポートする擬似人格である。彼女はその存在感から、読者を広大なサイバー空間へ連れ出し、状況を俯瞰する重要キャラだ。そして作戦中でも御構い無しの、ジャックとキャスの小気味良い遣り取り。これがハードボイルドな探偵モノを思い出させて、すんなりと頭に入ってくる。
『相棒が擬似人格である』、という一設定だけでも、この作品の屋台骨をしっかり支えている。これは完璧だと、個人的に唸った。
この要素の融合が絶妙である本作、多くの人に読んで欲しいと思う上に、書き手が設定を学ぶ上でも、非常に完成度の高い作品だと感じた。

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