電脳猟兵×クリスタルの鍵

作者 中村尚裕

26

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★★★ Excellent!!!

【重厚な物語、粋な登場人物、壮大で完璧に構築された世界観。これら全てを備えているのだから読者の胸を撃ち抜くのは必然である】海外ドラマや洋画好きな方は必見!

 賞金稼ぎのジャック・マーフィーはある事件をキッカケに過去の真相に触れる。巨大な陰謀の闇に隠されていた過去の真相を知った時、ジャックは復讐の猟兵として静かに動き出す。胸に熱いものを秘めて……。

 まず、何が凄いかって練りに練られたこの重厚なストーリーが本当に深みがあって引き込まれるんですよ! 行き当たりばったりの構成ではこうは絶対になりません。その少しずつ見え隠れする『謎』に心を掴まれ、読む手が止まらないんです。
 そしてその魅力を存分に発揮してくれるのが、粋な登場人物達。
 会話一つとっても、まるで洋画のワンシーンのようなダンディーでカッコイイやりとりに思わず見惚れてしまう。

 更に、シーンカットも絶妙です。各視点が本当に良いタイミングで変わるので、各々がその時どんなことを思い行動しているかがよくわかります。
 登場人物たちがそれぞれの信念の元、行動し、それが交わった時、物語が一つずつ前に進んでいく。それはまるでパズルのピースを一つずつはめていくかのようで……。その構成力は正に圧巻の一言です。

 と、色々な魅力が詰まったこの作品ですが、中々思い通りに進まない様や、政治や情勢が絡む規模の大きな話があることで、私的には登場人物たちが、この壮大な世界の中のあくまで一個人だという感じがしました。
 それが物語にリアルさを感じさせ、近未来という世界観にも関わらず、説得力や緊迫感などを生んでいるようにも感じました。

 最後にこの言葉を贈り、私のレビューとさせて頂きます。

酔いしれろ!
こだわり抜かれたその文章に。

胸踊らせろ!
熱いバディのやりとりに。

手に汗握れ!
ハリウッドさながらのアクションに。

涙しろ!… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

この作品がエンタテインメント性に満ちているのは、何より『王道』である要素が、うまく掛け算されているからだと私は思う。
つまり、『ハードボイルド』×『サイバーパンク』だ。これを上手くギミックとして活かしている。最たるものが、主人公たる『ジャック』と、その相棒『キャス』のコンビだ。
キャスは電脳空間から彼をサポートする擬似人格である。彼女はその存在感から、読者を広大なサイバー空間へ連れ出し、状況を俯瞰する重要キャラだ。そして作戦中でも御構い無しの、ジャックとキャスの小気味良い遣り取り。これがハードボイルドな探偵モノを思い出させて、すんなりと頭に入ってくる。
『相棒が擬似人格である』、という一設定だけでも、この作品の屋台骨をしっかり支えている。これは完璧だと、個人的に唸った。
この要素の融合が絶妙である本作、多くの人に読んで欲しいと思う上に、書き手が設定を学ぶ上でも、非常に完成度の高い作品だと感じた。

★★★ Excellent!!!

サイバーパンクという言葉を知ったのは、高校生の時に攻殻機動隊のマンガ版を初めて読んだ時だ。語感からして凄くカッコ良かった。

そう。カッコ良いのだ。
本作『電脳猟兵×クリスタルの鍵』を一言で表すならその言葉が一番あう。

舞台設定、出てくるガジェット、キャラのセリフ、それら全てに知的かつ危険な匂いがして、そそられる。

今の時代、今の自分より、背伸びした世界を体験させてくれるーーサイバーパンクの醍醐味が詰まった作品のように思う。

例えば、人格を備えたナヴィのシステムだが、Siriやアレクサの超絶進化系みたいなものだと思うと想像しやすい。この世界と物語は、空想の産物などではなく、現代と地続きだと捉えれば一段と濃厚な読み味になる。

この手のジャンルについては、ハヤカワから出てる作品をいくつか読んだ程度なので偉そうなことを言えないかもしれないが、個人的に本作はサイバーパンクのイメージを真正面から描いていると思う。

サイバーパンクを知らない人に対して、こういう作品だよ、と言えるような正統性を備えている。

とにかくカッコ良い。その一言に尽きる。
おススメです。

★★★ Excellent!!!

■中村氏は非常に骨のあるクリエイターである。それは氏の作品を某サイトでレビューしたことがあるので承知している。
■氏について一つ言えることは「SF とは何か?」ということを理解し強いこだわりを持って書いているということである。
■『作品へのこだわり』それはクリエイターなら誰もが持っているものである。だがそのこだわりを第三者に対して明確に楽しめるものとして作り出すのはそうそう簡単なことではない。
■多くの場合、そのこだわりを紙面上の作品として形成する段階で技術面や知識面などでこだわりを形にしきれないことが往々にして起こるからである。
■だが中村氏はその自らのこだわりを丹念に形にしていく。そしてその努力が形になったのが本作品である。
■本作はサイバーパンクのグローバルスタンダードとも言える電脳世界に、まさにハリウッド映画のようなサスペンス感溢れるハードボイルドワールドとして描いてみせる。そしてその最高の舞台の上で私立探偵「ジャック・マーフィー」と、バディである電脳人格「キャス」の絶妙なコンビネーションを展開して見せるのである。
■これはもうひとつのSF マエストロの仕事である。
■作品におけるこだわりの数々を是非堪能してもらいたい。

★★★ Excellent!!!

実を言うと、このレビューを書いている奴はSFというジャンルが苦手である。
苦手どころか、かなり苦手である。
だって、理解すんの難しいんです。世界観とか、用語とか。
しかし、この作品は不思議なことにその「苦手」とやらを感じさせてくれない。「苦手」を感じる以前に、するするとストーリーを楽しめてしまう。
ストーリーだけじゃなく、個性あふれる強いキャラクターたちと人間よりも人間くさく描かれる疑似人格たちのかけ合いも、魅力にあふれている。

作者が渾身を込めて描くであろう、そんな彼ら&彼女らがそれぞれ駆け抜け、行き着く先を、最後まで見届けたい。