きみには、守りたいものは、あるか!?

 宇宙からの侵略者『シンリャーク』の襲来により、地球はいま滅亡の危機に瀕して……はいなかった。
 なぜなら、魔法少女がシンリャークの魔獣をつぎつぎと撃退していたからだ。
 この魔法少女は、ニャンダフル星から遣わされた使者バニラによって与えられた魔法ステッキの力により変身し……ているわけでは全然なかった。
 魔法少女こと森野茉理は魔法の力なんかなくても、素手で魔獣を引き裂く力を得ていたのだ、……日々のトレーニングによって。

 とにかく、魔法少女ものと思わせてからの、話のずれっぷりが凄まじいです。

 ただ、本作が本当に面白くなるのは、茉理が魔法少女をやめてしまってからで、もうここからの主人公浩平の暴走っぷりが楽しく、そして見ようによっては格好いい。また、茉理が抜けたことによる、浩平とバニラの掛け合いもギャグのギアが一段上がる感じです。

 でも、本作読んでいて、ほんとうに素晴らしいなぁと思うことは、ギャグの上品さではないでしょうか。人をバカにしたり、汚いネタをもってくることなく、また一部の人にしか分からない笑いも皆無で、誰が読んでも安定して楽しめる笑いです。

 また、笑いの部分を外して、浩平と茉理の恋愛物語と見ても結構いいお話(……と反芻したらまた笑いましたが、とくにあの正体バレるところとか)となっています。

 そして、敵側のキャラクターもこれまた、楽しい。なんでしょう、あのお仕事小説ばりの中間管理職の悲哀は。

 といって、油断してたら、唐突におとずれる大ピンチ! クライマックス盛り上がります。しかも○○○○○を練習うんぬんは、冒頭に伏線ありますよね!

 本作は基本ギャグ小説なのですが、その中に少年の片想いとかヒーローの格好良さだとか可愛いネコだとか、お化粧に目覚めた少女がやっちまう失敗だとか、いろいろな要素が詰め込まれつつ、それでも地球の平和のために立ち上がったヒーロー、いやヒロインの物語である。


 きみには、守りたいものは、あるか!?

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