最後に。

 結果として彼女は、僕の旅に同行してくれました。


 そして昨日、やっとこの町に戻ってきました。


 この数年間。

 ずっと花人の声に、記憶に、耳を傾け、目を向けて来ました。


 悲しいものもありました。

 幸せなものもありました。


 一つ一つが綺麗で、そして切ない花々でした。


 今回は花人病の始まりに関するお話をする予定でしたので偏ってしまいましたが、いつか、ほかの花々のお話もしたいですね。


 今度は、花人だけではなく、人間の声に耳を傾けたいな、と考えています。



 ある日起きた、複数の吸血鬼たちによる大量殺人事件。

 それがきっかけで起きた、吸血鬼狩り。


 そして、そこに恐怖を感じた精霊遣いが生み出した、花人病。


 恐らく、大量殺人事件を起こした吸血鬼たちにも、それを起こすきっかけがあったはずです。

 残念ながら、それを聞き出す前に、危険だから、と彼らは殺されてしまいましたが。



 この数十年間で、たくさんの人々の人生がいろんな形で引っ掻き回されました。


 たくさんの人が死にました。

 たくさんの吸血鬼が死にました。

 たくさんの花人が死にました。


 たくさんの人々が、いろんな人々を、失いました。



 人間は、罪を犯します。


 でもだからって、根絶やしにしますか?

 複数人が誰かの命を奪えば、危険だから、と、その人の家族、親戚、友人を、狩り尽くしますか?


 死ぬだの、殺すだのじゃなくても。


 いろんなことで、いろんな形で、似たようなことが起きています。


 一人がなにかをやったとしても。


 その人に関わるほかの人も、同じことをする人だとは限らない。……まあ、同じことをしない人ばかりだとも限らないので、難しいところですが。


 ……。


 ごめんなさい、うまく話をまとめるのが苦手なもので。


 つまりですね、えっと……。


 誰か一人の行いだけで、その人が属する……そうですねぇ、コミュニティ、そう、コミュニティに属している他の人まで同じ行いをする人ばかりだとは思わないでください。


 日本人、という大きな括りで見ても、勤勉な人もいれば自堕落な人だっています。

 争いごとを好む人もいれば、嫌う人もいる。




 その上で、おたずねしたいのです。




 最後の花人病患者であり、危険だと狩り尽くされた吸血鬼、その国内最後の一人でもある彼女を。



 そこに座っている、瀬戸せと博貴ひろきの優しい姉を。





 あなたがたは、殺しますか?

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その花たちは君にほほえむ。 奔埜しおり @bookmarkhonno

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