閉ざした心の籠の中で蹲るカナリア。歌を思い出させてくれたのは…
- ★★★ Excellent!!!
過去の自主企画、イケメン鑑賞会参加作ということで拝読しましたが、胸をしめつけられました……。
主人公の大木さんは介護の現場で働く女性。
私としては若いのに大変なお仕事についていて素晴らしいと思うのですが、世の中には職業に偏見を持つ人もいるようで、くわえて学生時代から続くいじめを未だに受けているその様子に、憤りと悲しさで胸がしめつけられたんです。
居酒屋での「女子会」で大木さんがひどいいじめを受けている最中に割って入ってきたのが、隣のグループで飲んでいた後藤さんです。
彼は介護職で挫折したにも関わらず、再び介護の現場に復帰しようと学んでいる人でした。
いきなり踏み込んできた彼に、初めは大木さんも戸惑っていたようですが、絶妙なグイグイ加減で懐に入ってくる彼を前に、心にかけていた鍵が少しずつ解けていきます。
いじめにも屈せずに強く生きている心の奥、歌を忘れてじっと蹲るカナリアの存在を彼は気づいてくれました。
彼がこの先も寄り添っていてくれるなら、大木さんもきっとカナリアの歌声のように美しく澄んだ心を解放できるんじゃないだろうかと、読後は希望の光に安堵しました。
童謡の歌詞の一部は知ってましたが、西條八十の詩も雰囲気があって味わい深かったです。