こんなに魅力的な物語が読めるとは思ってなかった。
荒廃した世界の片隅で、絶望的な状況に愛だけをささえに抗う二人の物語。
そうそう!こういうのが読みたかった!!
文明崩壊後の荒廃した世界って、こういうのだよね。
すべての希望を失い、死を待つしかない状況から、互いへの愛だけで支えあう二人が、やがて絶望を打ち破り、皆に希望をもたらす。そのエンディングが素晴らしい!!これな幸福に満ちたエンドはないでしょう。
主役2人の愛と献身のストーリーの脇で、歪んでしまった愛と希望、喪失と克服の物語、などの様々な人間関係が描かれ、ストーリーに惹きつけられ続ける。
世紀末SFすきなら、是非読んでほしい。
荒れ果てた世界をミュータントと呼ばれる化け物が闊歩し、ハンターを名乗る人々が銃器と戦車で戦う世界。
「荒野と戦車」のキーワードで有名なRPGゲームの悪意を100倍にしたような作品です。
ヒロインが四肢を失い戦車と一体化する少女という時点で激しく読者を選びます。
他にも全体的にセンシティブな描写が多く、それがダメな人には受け付けないでしょう。
しかし刺さる人間には非常に刺さる。
登場人物も癖のある人間ばかりで、仲良くしていても状況次第で敵対することも辞さない殺伐とした世界の中で、主人公とヒロインだけは絶対にお互いを裏切ることはないという信頼があるのも良い。
アクが非常に強い作品ですが、小説としての完成度はとても高い。
読者をあっという間にひきつけ虜にする魅力のある作品なので、まずは一読してみることを勧めます。
《良い点》
①主人公無双ではない
主人公は弱くはないが、決して俺TUEEEというわけでもない。
葛藤を抱きながら戦う姿はとても泥臭く、生々しいとすら思える。
主人公ディアスの生き様をここまで巧みに書ける作者様の文章力は必見。
②世界観に引き込まれる
死と隣り合わせの世界。その世界を跋扈するミュータントの不気味さと謎の
多さが背筋をぞっとさせるような絶妙な世界観を醸し出している。どういっ
た部分かと話すとネタバレになると思うのでその点も是非、読んで確かめて
みて欲しい。
③ホラーゲームのノベル版を読んでいる気分になる
感覚的な話になるが、読んでいて思った感想はこの一言に尽きる。
戦車が登場し、武装や弾種なども豊富であり、敵の強さも回を追う毎に強く
なるという展開が何処となくゲームのよう。また、いきなり核心に迫るので
はなく、外堀を埋めるように徐々に謎が解き明かされていく描写などもホラ
ーゲームを思わせる。
こんなゲームがあってくれたら、と思わせてくれる一作です。
初っ端からいきなり繰り広げられる戦闘描写は、眼前にハリウッド映画顔負けの映像を浮かび上がらせてくれます。
そして、主人公たる二人が交わす会話は、あまりにもウイットに溢れていてハリウッド映画のセリフそのもの。
この描写と台詞回しだけとっても、この物語は読まなければ「損をする」と断言できます。
単純に、読むという行為が楽しくなるのです。
しかしこの物語の本質は、単なるエンタメ戦闘物語ではありません。
生きていくための戦いの中で四肢を失った美少女と、彼女を慕いそして愛する無骨で誠実な青年の、とてもピュアな恋愛物語。
いや、恋愛という言葉を超えた、もっと深い繋がりを描いた物語です。
エンタメ要素をふんだんに散りばめながらも主人公二人の心情を細やかに描き続けるこの物語が、この先二人の生き様をどんな風に私たち読者に見せてくれるのか?
毎日更新を待ち望む気持ちでいっぱいです。
こういう義手義足に武器を取り付けて戦うの好きです。そこへ泥臭い戦闘が加われば、もっと大好きです。
荒廃した世界感では道徳心や親切心なんて二の次・三の次となり易いですが、主人公の不器用ながらも真っ直ぐとした人間性がヒロインの心を救い、そして彼女に希望を与えるというシーンを見ると、人間は希望の光さえあれば生きていけるのだなと思えてしまいます。
そして戦場の緊迫した状況描写や主人公の心理描写なども心が躍り、そして銃器で闘う姿に心がスカッと晴れ渡る気分です。
義足や義手で闘うサイボーグ系のSFバトルながらも、泥臭いミリタリー系が見たいという人は是非此方を御読み下さいませ!!
それは二人にとって目をそらせることもできない壮烈な戦闘シーンが半分、残りの1/4は生きていることを確かめ合う二人。僅かな残りの部分に、この世界の人達の生き方が短い文章の中に丁寧に描かれている。
並大抵のことではない困難を超えて生き残った二人の戦いは、アニメ化したら「蒼き美しきドナウ」がBGMで流れていても不思議ではないだろう。
二人の目的は、生き残ることであり生きている証明(あかし)を求めて悶ているのかもしれない。が、その世界においては誰もが求めていることでもある。
もちろん、リアルの世界でも生きている証明やなんのためにやるのかという理由付けが欲しい人達がいるけれど、それの答えが潜んでいるかもしれない。
SFやファンタジーで難しいのは一から世界観を構築して
それを読む側にスムーズに理解させ、
自然と入り込めるようにすることだと思うのですが
この話は特に難しい用語をつかうでもなく
わかりやすい文章で荒涼とした近未来の情景を描き、主人公たちの行動を描写を追っているうちにどんな世界なのか自然と伝わってきます。
ストーリーも
明日をも知れない絶望的な日常を
男が女を守り抜く、それだけを支えに生き延びようとする心情が丁寧に描かれています。
緊張感はありますが、過剰に刺激的な展開ばかりということはなく
主人公とヒロインの交流が読んでいてほっとさせる安らぎになっています。
この先どんな展開になるのか楽しみです。