「よんよんまる」が何を意味するかは、音楽やってた人ならすぐわかるかも。
というように、本作、とっても音楽です。クラシック音楽あるいはまつわる用語がこれでもかと出てきます。不勉強な私は半分くらいいしかパッと頭に出てきませんでしたが、心配無用。知識があればあったなりに非常に楽しめるし、ないならないでもちゃんと楽しめます。そういう作りなんです。作者の力量の凄まじさってやつですね。
音楽はもちろん超重要な要素(エレメント)なんですが、この物語の真髄(エッセンス)はその秀逸にすぎる人間関係の描写にあります。音楽を通じ、音楽をきっかけに、人々が集まるわけですけども、ほんとね、この関係性というのが、実に憎い。憎いくらいに「絶妙な距離感」がある。その人間関係でグイグイと読者を引っ張っていく、まさに「魅せる」描写が非常に多い。
BL的な場面がギトギトしてないのもとても良いです。私は男で、いわゆるBLは苦手に属する人間ですが、本作は全然気にもならない。むしろ「いいぞもっとやれ」な気分にすらなりました。
私のイチオシは響ではなく、詩音……でもなく、花音です。頭が良くて美人で性格も良いとか、どこの女神ですかね。彼女の『距離感』も実に素敵なのです。だからこそのイチオシ。ただ、この主役級3名はどの人物も非常に魅力にあふれる「人間」です。人間書くの上手いなぁと、改めて思う次第です。
いいから早くドラマ化しろ、と、私は強く思うのです。
(私の中で)キャスティングもがっつり決まっていたりして……!
ピアノ界のプリンスこと大路詩音と、孤高の作曲家、大神響。白と黒、イメージも真反対のこの二人は、音楽の神の導きとしか思えない邂逅を果たし、そこから二人の「音楽」が始まります。
お互いが「自分に足りなかったラストピース」だと悟った二人は、ピアノユニット「よんよんまる」を結成。順風満帆に見えるこのユニット、果たしてこれからどうなっていくのか──?
と、あらすじからしてもう面白いとおもいませんか? あらすじだけじゃなく、もちろん中身もしっかり面白い! 音楽に馴染みのない私だって「音楽って素晴らしい!」と思えるほどの傑作です。
もしこの作品が映像化され、音の入った「よんよんまる」を観ることができたなら。私はその時もう一度、スタンディングオベーションしていることでしょう。
この素晴らしい体験、是非とも味わって頂きたい。オススメの一作です!
子供の時に受けた衝撃を忘れられない世界的なピアニスト。子供の時に受けた思い出を忘れられない新進気鋭な作曲家。その二人が神様のいたずらで再び出会うことで、二人の間で止まっていた人生が再び動き出す。
ピアノの森で繰り広げられる、二人の楽しい時間とそれをささえるピアニストの姉。ボーイ・ミーツ・ガール、ではなくて、ボーイ・ミーツ・ボーイ(ウイズ・ガール)な物語。
人間てまだまだ捨てたもんじゃない。そう思いたい人は、ぜひ一気読みして如月変態ワールドに、いらっ♫しゃーい。
注)黒胡麻餡の八つ橋を食べながら読むと、涙が止まらないかもしれません。
全く正反対の二人が織り成す物語。白と黒。気品溢れるプリンスとワイルドな一匹狼。相容れない二人のようですが、お互いにないものを持つからこそ惹かれあい、尊重しあい、新しい世界を拓いていきます。
それぞれの環境、成長、試練。それらを乗り越えていく過程に完全にひきこまれていきますよ。
音楽がベースのおはなしですが、詳しくなくてもその世界にどっぷりつからせてくれます。クラシックなのに堅苦しくなく、この読みやすさは一体どうなってるんでしょうね。
ラストのステージへ向けて、どんどんヒートアップし盛り上がっていくストーリーとともに、読み手のペースも上がっていきますよ~。
二人が奏でるのはどんな曲になっているのか聴いてみたくてたまりません。チケットが欲しいです!
ドラマ化希望の作品です!
一応『BL』の表記があるが、いわゆるBLっぽい描写はないので、苦手な方もご安心を。
何しろ、作者本人が、「BLは苦手」だと公言している。
主人公ふたりの互いへの『想い』を筆頭に、この物語には沢山の『想い』がこめられている。
親子の、音楽に対する、お世話になったひとへの。
著者の作を何作か読んでいるが、特徴として最後の『結末を読者に託す』点が素晴らしい。
はじめはもっと読みたい、と物足りなく思っていたが、蛇足がなくこの先どうなるのだろう、というワクワク感が読後も続くのが面白い。
今作は特にそう思った。
BLっぽい描写はない、と言ったが、色眼鏡をかけた腐女子の皆さんにも満足頂ける『両想い』っぷりなので、我こそは腐女子という方にも読んで頂きたい(笑)
正反対に見えて似たもの同士。二人の求めるものは同じでした。
純白のプリンス、大路詩音はピアニスト。漆黒の一匹狼、大神響は作曲家。
ともに才能に溢れた者同士が出会ったのは運命的でした。
二人は互いに自分に欠けていたものを相手に感じ、音楽ユニットを組みます。
二人の打てば響くような会話と、クリエイティブで躍動感に溢れたステージが本当に楽しくて、読みながらピアノの旋律に包まれるような気持ちになります。
クラシックに詳しい方ならこの作品の面白さを100%堪能出来ると思いますが、残念ながらそこまでの知識がない私のような読者でも充分に楽しめます。
テンポの良い文章は天才ピアニストの弾く名曲のように淀みなく、心躍る音楽の世界へ読者を導いてくれます。
芸術家同士のはじめて理解しあえる魂の出会いと歓喜は、BLと呼ぶにはあまりにも純粋で微笑ましいものでした。清々しい青春小説と言っていいと思います。
至福の読後感を是非味わって下さい。
5歳の時、ピアノコンテストで出会った詩音と響。演奏スタイルも育ち方も違う天才二人がやがて再会し、ユニットを結成していく……。
主軸の一つはもちろん、作者様の大好きなクラシック。正直曲も用語も全て知っているわけではありませんでしたが、それでもすらすらと頭に入ってくるのは読み方に配慮した構成と筆致の賜物です。
その他にも、楽器、作曲家、動植物、ファッションと、きっと普段から興味を持ってるであろうことがよくわかる知識が綺麗に小説に溶け込み、唯一無二の作品に仕上がっています。
もちろん、ストーリーも上質。ただの天才音楽家のサクセスストーリーに終わらず、それぞれの生き方と人間模様、そして試練を乗り越える過程が「ドラマ」として成立しています。
その見せ方の流暢なこと。読みやすいったらありゃしない。始めはコメント入れてましたが、最後は夢中でページをめくっていました。
アンダンテで読ん始め、最後はアレグロに読了する。皆さんもこの楽曲、楽しんでください!
プリンスと狼。二人が再会した時、誰もを魅了するコンサートの幕が上がる――!
非常に安定感のある現代ドラマです。
音楽、それもクラシックやピアノという硬くなりがちな題材を取り扱っているにも関わらず、読んでいて苦にならない。どころか、物語を読みすすめる間中、どこからか音楽が響いているような空気感は見事です。
確かにこれは音楽を題材にしたお話です。そこは疑いようがない。
けれども、このレビューで私が申し上げたいのは、本作の真骨頂は響と詩音、そして花音の生き様にあるということです。
個々人で非常に高い能力を持つ三人ですが、物語冒頭で互いに知り合うことによって、それぞれの強みをさらに活かすことが出来る。けれども、誰か一人でも欠けてしまえば、一人で演奏していた時よりも弱くなってしまう。この絶妙な関係性が私を惹きつけて止みません。
ピアノ曲は右手と左手、どちらか片方が欠けても成立しません――えぇもうまさに、三人の関係性はピアノ、あるいは音楽そのものと言っても良いと思います。
少しでも興味もたれたそこの貴方、是非一度、本作を読んでみてください。
彼らの奏でる音色に酔いしれること間違いなしです。
この作者さまの別作品(KADOKAWAビーズログ文庫『いちいち癇に障るんですけどっ!』)は書籍化もされています。だから、この作品もおもしろくないわけがないですし、文章が確かなのでどんどん物語に引き込まれます。
やっぱり筆力は大切なんだなとよくわかります。ヨム人はもちろんですが、カク人にこそ読んでほしい作品です。
鳥村楽器、ショージン電気、ヤスダ電機、プリンセスホテルなど、小ネタもちょっぴり笑えます。
それと、作品とは関係ありませんが、作者さまのプロフィールに『ユルい変態』とあるものの、実のところは『ガチの変態』らしいです。全方向からの絡みを歓迎されています。
初レビューののち、読了まで楽しみに追ってしまいました。
二人の天才ピアニスト(片方は作曲とトランペットも)が織りなす、音楽の世界。鍵盤ヴィルトゥオーゾのリストのような華麗な演奏で観客も読者も魅惑する。
互いに幼少時から意識し合う二人がどんなふうに心を通わせ、変化していき、その中には楽しいだけではない。苦悩も……ネタバレは控えますが、先が楽しみで展開に目も耳が離せません。
個人的には音楽に魅了されました。そうそうこれ! と興奮するばかり。ロマン派以降がメインですけれど、出てくる曲目はクラシックだけではありません。作曲家の主人公のアレンジにも心躍ります。そしてその演奏プログラムの組み方がまた秀逸! これは、という曲目です。
作者様の非凡な知識に、音楽好きの方もそうでない人も、おおっと嬉しくなり、驚き、実際に曲を聴きながら読んでしまう(私もやりました)。
そうです、クラシックって、固くないんです、楽しいんです! 作曲家も、曲の中にたくさんの遊びも混ぜているのだし。
演奏会のベルが鳴ったつもりで、読んでみてください。
演奏会と言っても、畏って聞くような堅苦しくつまらないものではありません。18世紀も19世紀も、演奏会では笑ったり話したり、打ちとけた雰囲気の中で、音を通して、奏者と心を通わせるのですから。
奏者二人はこっちの心をぐいぐいひき寄せてきますから、さあぜひ!
そしてどの時代にも、芸術家には支えが必要です。ハイドンだって弟子たちが彼のために仕事に精を出しますし、ベートーヴェンにも秘書役がいました。
主人公二人には、なんとも敏腕で魅力的なお姉さんが(格好いい)ついています。
この「クール」なもう一人の才能にもご注目を。
プリンスとウルフ、実は表はそう思われる二人の性格ですが、個人的にはもしかしてこれは……と思ったところも惹かれました。
これはもっとたくさんの方に読んでほしい!