(7)

「助けて、ドラゴン」


 ある日、少年の声が聞こえた気がして、ドラゴンは目を覚ました。

 洞窟の前に、少年はいなかった。

 けれど、湖の向こうの空が赤々と染まっているのが見えた。そこは、少年が住んでいる村があるあたりだ。


 少年の村は、この一〇年の間に新しくできたものだった。

 この地に侵略してきたボヌム人の迫害を恐れた人々が、村ごと山間に移り住んだのだ。

 ボヌム人は、ついにその小さな村にも侵略の手をのばした。 


 突然の大軍の来襲に、村人たちはなす術がなかった。

 ボヌム人たちは家々に火を放ち、村は炎に包まれた。

 彼らは、その侵略も正義の戦いであると信じていたから、まるで容赦をしない。

 火に追われ、兵に追われ、村人たちは逃げ惑う。

 ボヌム人は大人を殺し、家畜や財産を奪った。女や子どもはさらって、奴隷として働かせるつもりだった。

 村の人々は、石づくりの教会にこもり、神に祈った。

 その教会にもボヌム人が迫った。


 そのときだ。


 山の向こうから、何かとてつもないものが飛来してくる。


 大きな翼、長い首、大蛇のようなしっぽ。

 頭には四本の角、大きく裂けた口。

 ギロリと光る黄色い目……。


 伝説のドラゴンが、ボヌム人たちの前にあらわれた。

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