末永くお幸せに、という言葉がこれほど似合う二人はいない

<魔物狩りの英雄>と称えられた戦士ヤスヴァルは、エルフの王女エルノーラと恋に落ち、生涯ともに暮らすため霊薬を使って不老不死となった。
結婚した二人は途切れることのない幸せな日々を送る……はずだった。

千年も暮らしてきた二人に訪れたのは、倦怠期。
そう、夫婦の危機である。
新婚当初の甘い雰囲気はすっかり消失し、言葉少ない事務的な会話で一日が終わり、触れ合いはもちろん夜のあっちも数百年前が最後というスケールのデカさ。
世の中の夫婦を悩ませる倦怠期というありふれた問題には、英雄とエルフといえど避けることは叶わなかったのです。

てか千年も経ったらしょうがなくね!?

などと考えつつ、昔のようにイチャイチャしたいエルノーラを堪能してニヤニヤと読み進めていましたが……
途中から、しょうがない、と考えてしまった自分を恥じました。

ヤスヴァルは不老不死になったといえど人間で、心は変化する生き物。
対するエルノーラはエルフで、精神構造が人間と違うためいつまでも新婚気分を保っている。すれ違いの原因は明らかですが、しかし根っこにある問題は「愛情の形」だと言えます。

昔と同じような愛情表現を与えてくれない夫に、寂しさと恐れを抱く妻。
昔と変わらない愛情を持っているつもりだが、以前のような距離感を保てず妻を怒らせてしまう夫。
これは普通に生きる夫婦にも当てはまる悩みであり、誰もが多少の心当たりがあるでしょう。
ヤスとエルの時間間隔は一般人とかけ離れていますが、この感情は普遍的なものであり、だからこそ彼らの行く末が、結論が気になってしまいます。

不老不死となった二人はこれからも添い遂げ続ける。
その悠久の時の中で、できれば末永く幸せに爆発していて欲しいと願うラストでした。
大人にとっても読み応えのある物語です!是非読んでみてください。

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