優しい世界

コゥチャさんが言うには彼女達が来る前からブラウニーさんは此処に居て、レサさんから聞いて居るのは知ってるけどレサさん以外には見えてない。

でもブラウニーさんが触ってる物とかが動くのは見えてるから居るんだと認識出来ている状態らしい。


見えてるオレを囲んで小さい子達とコゥチャが凄い凄いと自分の事のように喜びブラウニーさんがどんな容姿をしているのか、妖精がどんなのか聞かれてるうちに時間が経ち陽も落ちていった。

その事に気付かず聞かれるままに戸惑いつつ話していたらココァさんが子供達の隙間を縫って手を差し込みオレの服を引いた。


「ん?ココアさん?」


「あまり時間が無かったのではないのか?もう夜になる」


「あ、帰らないと!ごめん、そろそろ帰らないと。レサさん、遅くまでお邪魔しました」


「うるさいばかりでごめんね!チビ達も喜ぶしいつでも来て!」


そんな言葉を聞きながら置いて行く訳にもいかないし毛玉シープを探して居るとまたぽーんと跳ねて頭に乗ってきた。白雪も肩に戻って来たし鞄を掴んで今度こそ帰ろうと立ち上がるとココァさんの手がまた伸びてきてウエストポーチの紐部分をつかまれる。


「母、送ってくる」


「えっ!?ココァさん?」


「はーい。おおかみのお家知ってるでしょ。ツバサあそこに泊まってるからよろしくね!」


「えっ、大丈夫で」


面倒だろうと遠慮するけど、構わんと言われてウエストポーチを引っ張られ連れ出される。結局ココァさんに半ば強引に連れられ送ってもらう事になってしまった。


「すいません、送って貰ってしまって」


「君は生きるのが不器用だな。私が言ったんだ、構わん。気になるなら今度尻尾のブラッシングさせてくれれば帳消しにしよう。あとさっきも言ったが楽に話して良い。違ったら申し訳ないがおそらく君の実年齢私よりも上だろう」


「尻尾くらいいくらでも…って、何で年」


「引っ掛かったな。カマをかけたんだ。でもそうかやはりか」


そう言いながら満足そうに頷く。その間に何だか冒険者っぽいおじさんとかにココァさんは『外に居るなんて珍しいな。デートか?』とか話し掛けられ新しい兄だ、とかいっている。

こんな簡単に自分がカマをかけられて引っ掛かる性格だったとはちょっと思わなくて溜め息が出た。


「あー、分かった。もう素で居させてもらうよ。ココァたち悪いって言われないか?」


「うむ、君でもう何人目だろうな。だが裏を返せば私に詳しくなったという事だ。良かったな、私マスターのゴールはまだまだ先だぞ」


「ゴールに辿り着ける気がしない。言いたくなければ聞かないけどココァは何で孤児に?」


「母から聞いたんだろうが私達に関しては少し語弊があるな。元々孤児には違いないが私達は幼い頃、落ちてきたんだ」


彼女が言うにはまだ5才にもならない頃オレのように落とされて来たプレイヤーらしい。オレみたいに元成人してたならともかく小さな子供を他のプレイヤーのように放り出す訳に行かないとある程度成長するまで教会の孤児院で保護される予定だったそうだ。ただ当時孤児院の人も少なく相当大変な状況だった。そんな時レサさんがたまたま手伝いに来て状況を知り、1番新入りだったココァとコゥチャ姉妹、今は別の国に居るという2人と冒険者をしているという人の5人を引き取ったらしい。


「同情は要らんぞ。私達は良い時に落ちてきた」


「そっか。皆仲良さそうだったもんな」


「君も多分今後巻き込まれるぞ。なんて言ったって母の友人でコゥチャのお気に入り。そして私の兄だからな」


「あー、なんかさっき言ってたよな。オレ色々埋めてかれてる?」


さっきの見知らぬおじさんとの会話を思い出す。二度テンション高く抱き締められたコゥチャさんはともかく、第三者にまで新しい兄って言われてるってこれ外堀から埋められている感がする。


「うむ。残念ながらうちには獣人系はブレンドしか居ないんだがアイツは最近反抗期でな、触らせてくれないんだ。だから私は君で溢れるリビドーを満たさせて貰おうと思う」


「そんな事女の子が淡々と言うなって!誤解を生む!」


「君なら問題ない。ほら、着いたぞ」


表情はあまり変わらないけど面白そうに言った後店を指差され脱力する。なんか遊ばれてる気がして来た…。オレってこんなに単純だったっけ?


「尻尾のブラッシング用に上質な櫛を買っておくから忘れるな?じゃ」


「ブラッシングは良いけどココァも気を付けてな。またそのうち行くから」


颯爽と帰ろうとしていた背中に声を掛けると後ろ手にひらひら手を振って人ゴミに紛れていった。此処に住んでもう長いんだし夜道だろうと多分何の問題もないんだろうと思う。完全にココアの姿が見えなくなると気を取り直してオレも店に入った。



翌日、行き損ねていた森へと向かった。話の途中で帰る事になってしまったし、始まりの森の王の庇護の事も聞かなきゃいけない。それでもし王の意思で外せる物なら外してもらいたい。なんかズルっぽい気がするし。 と思って森に来た訳だけど当然だけど早々王も仔狼も見つかる訳がない。普段は住処に居るだろうし、狩られる事を警戒してたからどこかに隠れてるだろうし。入り口の辺りからそのまま突っ切って奥の方まで来たは良いけどマップにも王の住処なんか載ってる訳もなくただ森を彷徨うしか無かった。


「いないニャ」


「居ないな。やっぱそう簡単には会えないよな」


「とびつきウルフはけいかいしんがつよいのニャ」


「野性の狼だもんな。呼んだら来てくれるかもしれないけどそれこそ冒険者居たら危険だもんな」


よく考えたら分かった事だったかもしれない。そういう事をあまり考えずに飛び出してしまった。

高いところから見れば探しやすいかも、と考えてそこそこの高さの木に登り辺りを見回す。残念ながら飛び付きウルフ達も他の獣も見当たらなかったけど高い場所から見る森の景色が綺麗でぼんやりと眺める。


思えばこんなにゆっくりと自然を眺めるのもここに来てから初めてだ。

あっちの世界でも、もう少し空や自然を眺めてみれば良かったと今更思ってももう遅い。だってあちらの世界にはもうオレは捨てられていて帰る方法も分からない。帰ったって友達と明確に言えるのはたつきだけで他には待ってる人も場所もないんだと思ったらここの方が余程オレの居場所となんじゃないかと思った。


優しいのはオレじゃない。優しいのもあたたかいのもこの世界の方だ。


剣も魔法も有って力が無ければ簡単に死んでしまう世界だとしてもオレがこの数日出会ったみんな優しくてこの世界が好きだと思った。


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「捨てられた世界には未練は特にない。それよりも、最初はとまどったけどこの優しい世界で生きてみようと思えた」


一旦ここで1章終了とします。今後の投稿については近況ノートをご確認下さいませ!最後の最後に癖の強いココァのターンでしたがとっても楽しかったです^^

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神様なんて居ないと言っていたら存在を誇示された Baum @Baum0909

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