ゆっくりと過ぎていく、ありふれた時間を大切に

中学3年生の"私"と教室で隣の席に座る"横尾くん"が展開する、ありふれた(そして少しだけ変わっている)日常を描いた連作短編集です。
ユニークな感性を持つ横尾くんの語りにくすっとしたり、知ってもあまり得をしないような豆知識に感心したり、じれったい2人の距離感に悶えたり、ふとした瞬間の深奥を突く一言にドキッとしたりと、読者の心の色々な部分を刺激してくれるのがこの作品の素晴らしさです。
隣の席の2人によって繰り広げられるどこまでも微笑ましい日常をいつまでも眺めていたい気持ちになりますが、時間は一方通行です。
時が経てばいずれ"私"と"横尾くん"を取り巻く環境は変わりますし、2人の距離感も変わってくるのでしょう。
しかしだからこそ、現時点でのありふれた日常が、何よりも愛おしいものとして感じられます。
ゆっくりと、だが確実に過ぎていく2人のありふれた時間を、これからも読者のひとりして共に過ごさせていただきたいと思います。

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