楽しく微笑ましい横尾くんとの会話

 横尾くんと「私」との軽妙なやりとりが楽しく微笑ましい作品です。二人の会話(というか横尾くんの語り)の話題は多くが日常的な事柄ですが、それがときに人生観にまで発展していて、そのあたりも思春期ならではの心の機微が上手に表現されているように感じました。
 横尾くんはコミカルに描かれていますが、ときどき自分も作中の「私」と同じく、心のなかの大事なところを不意に横尾くんに突かれたような印象を受けて驚いたりしています。あと、たまに横尾くんがいないのも面白いですね(笑) いないのかよ、と思わず突っ込んでしまいました。
 自分を「私」に重ねるか、それとも横尾くんに重ねるか、というのも、読むひとによって変わってきそうで、それもこの作品の面白いところだと思います。私は基本的に「私」の目線で読み進めつつ、ときどき横尾くんになったつもりで、語っていないときにふと眺める隣の席の女子の横顔を想像したりしています。引き続き楽しみにしています。