「花火師」という異名をもつ芸能マネージャー・佐伯を中心に、キャラクターがしっかり立ったタレントたちと、さまざまな思惑をもった他の芸能関係者たちをめぐる人間模様が、重厚なミステリーの雰囲気を醸し出しながら綿密に描かれています。
芸能界という、一般の生活からは切り離された場所が舞台ですが、臨場感のある具体的な描写のおかげで、その世界のなかを生きているかのような感覚を覚えました。小説世界の圧倒的な構築力と、堅固な文章力に支えられて、登場人物が生き生きと躍動しています。
各エピソードが比較的長めの字数で構成されているため、読み通すには時間がかかるかもしれませんが、その時間に十二分に値する濃密な作品です。個人的には美織とアズサのやりとりをもっともっと読みたかったので、完結が少し寂しいです(笑)また別の世界のお話でしょうかね。