お金にまつわる謎をテーマにした日常系の連作ミステリーです。主人公の大学生・遙と謎の探偵・赤石を中心に、遙の友人や赤石の兄・征吾といった、魅力的なキャラクターがあふれています。文章も軽快でとても読みやすく、また各話もちょうどよい長さのため、テンポよく読み進めることができました。
お金は私たちの生活と切っても切り離せないだけに、お金の謎はそのひとの人生に関する謎でもあるように思います。謎めいたお金の探偵である赤石自身が、まさにそのことを体現しているようです。そのために、お金の謎を解いているはずが、それに関わるひとの暮らしや心情までがあぶり出されることにもつながってきて、非常にうまい作品設定だと感じました。
まだ連載されている途中ですが、遠いようで近いような遙と赤石の距離、弟を心配しているのか監視しているのか分からない征吾の真意など、先が気になる要素が散りばめられていて、これからの展開が楽しみです。もっと多くのひとに読んでもらいたい優れた作品です。